◆所蔵品から◆資料ナンバー8716~8728 掛け図「防空図解」の話
資料班



「防空図解」

防空に対する各家庭平常の準備(其の1)

 横幅約60センチ。上端は金属がついていて、ひもで吊り下げるようになっています。小学校の教室に掲げてあった地図や年表みたいな「掛け図」です。
 隣組や婦人会などの、人が集まるところに貼り出して使ったのでしょうか。
 13枚の「防空図解」の寄贈がありました。
 そのうちの1枚、「防空に対する各家庭平常の準備 其(そ)の1」をご覧いただきます。(其の3まであります。)其の1は灯火管制に関することで、灯りにおおいを付けておくこと、外の明かりに自由点滅用スイッチをつけること、遮光をきちんとした部屋を作り、明るく愉快に過ごせるよう準備すること、の3点が絵入りで説明されています。
 

「防空図解」

防空図解

 13枚の掛け図は1枚ずつばらばらになっているのですが、表紙にあたるようなものがこちらです。
 発行は小林又七本店。所在地は東京市麹町区永田町1丁目4番地です。(永田町は今だと千代田区)
 ピースあいち常設展の第1展示「愛知県下の空襲」によると、防空法は1937年に公布されているので、この掛け図はそのあとにできたものと思われます。


「防空図解」

防空に対する各家庭平常の準備(其の3)

 「防空に対する各家庭平常の準備 其の3」はすべて、「防毒」に関することです。
 市民用防毒面少なくとも1個を備え付けること、防毒室を準備しておくこと、防毒蚊帳を用意すること、親子用防毒着を作っておくこと、応急防毒面の製作を習っておくこと、の5点が説明されています。
 防毒面といえば、以前、メルマガ43号でご紹介した教科書「初等科工作」には「モケイ防ドク面」の作り方が載っていました。気分だけのものではなく、けっこう応急用として使えるものだったのでしょうか。
 ここでの防毒とは毒ガスへの対策という意味のようです。空襲で毒ガスがばらまかれるのか?
 
 

「防空図解」

都市空襲の脅威

 空襲と毒ガスに何の関係があるのか。「都市空襲の脅威」という図には、「油断すると 消防隊の 力も及ばぬ 数千ケ所の 発火と ともに 毒ガス が来る」と書いてあります。空襲でもたらされるのは火事と毒ガスである、ということになっています。

「防空図解」 「防空図解」

家庭防護計画の一例

 お風呂場を「防毒室」にしているところの図です。黒いカーテンで光をふさぎ、さらに窓のすきまに目張りをして、ガスが入らないようにしています。

 下の図は、家の見取り図です。勝手(キッチン)には水道ホースと防毒面置場があります。茶の間には非常持出品を置くようです。窓には「黒カーテン」です。浴室は防毒室になり、浴室の窓は「密閉箇所」になります。居間と客間の近くの廊下には消火器、家の外周に消火用水が置かれます。
 火事と、毒ガスへの対策が具体的にわかるようになっています。



「防空図解」

空襲警報が出たら各家庭では(其の2)

 防毒室ってどういうふうに使うのか。「空襲警報が出たら各家庭では 其の2」を見ると、「老人、子供は防毒室へ」「大人一人は外部との連絡に残る」というような使い方を想定していたようです。右下の図を見ると、防毒室の外にいる大人はガスマスク(防毒面)を着けています。
 防毒室についてはいろいろな方向から説明されているのに、防空壕を掘りましょう、というのが全然ないのも不思議に思いました。


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http://peace-aichi.com/20170219_boukuuzukai.pdf
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