境界を越えてつながる平和の学び◆ピースあいちを訪れて
ピースモモ キム・ジンソン

                                           



 1月末にピースあいちを訪問させていただきました、ピースモモのキム・ジンソンです。
 このたびは長い時間をかけてご説明くださり、またピースモモの活動にも関心を寄せていただき、本当にありがとうございました。スタッフの温かいおもてなしのおかげで、とても心地よく、印象深い訪問となりました。
 ピースあいちの設立の過程が伝わる映像やお話を通して、日本における「戦争」と「平和」へのまなざしを、これまで以上に深く理解する貴重な時間を持つことができました。私自身、日本に留学した経験があり、日本の文化にも親しみを感じてきたことから、日本の方々と交流する機会も多くありました。しかし、坂井様がお話しくださったように、韓国と日本の間には戦争に関する歴史教育の違いが大きく、対話の中で限界を感じる場面も少なくありませんでした。だからこそ、「何が起きたのかを正確に知ること」の重要性を、あらためて強く感じています。その意味で、戦争を経験した世代が次の世代へと語り継ごうとするピースあいちの取り組みは、非常に大切で意義深いものだと感じました。
 韓国では、戦争の記憶を語り継ぐ活動に加え、その記憶を「今、ここにある平和」へとつなげ、再解釈しようとする試みが活発に行われています。激動の現代史の中で絶えず変化を経験してきた私たちは、平和を過去の遺産としてだけでなく、現代の葛藤を解決するための実戦的な指針として捉えてきた面があるからです。
 私が所属しているピースモモでは、戦争だけでなく、日常の中で私たちが直面するさまざまな葛藤や対立を入り口に、平和について考え、実践していくことを大切にしています。そうした中で、平和を実践する場としてピースあいちでボランティア活動をされている方々に出会えたことは、私にとって本当にうれしい出来事でした。

 海の向こう韓国で「誰もが誰からも学ぶ平和」を主要な価値として掲げ、活動している平和教育団体「PEACEMOMO(ピースモモ)」を少しご紹介させていただきます。

1. 「モモ」という名前に込められた意味
 PEACEMOMOの「モモ」は、韓国語の「誰も(モドゥ)が誰(モドゥ)から学ぶ」の頭文字と、ミヒャエル・エンデの小説『モモ』に由来しています。ここには、教師が学生に一方的に知識を伝えるのではなく、私たち一人ひとりが経験と知恵を分かち合い、共に平和をつくり出す主体であるという哲学が込められています。

2. ピースモモが志す平和教育
 ピースモモは、単に「戦争がない状態」を超え、日常の中に潜む構造的な暴力を省察し、それを変革していく「平和感受性」に注目しています。
教室から社会へ: 学校の教員向けの平和教育研修だけでなく、市民参加型のワークショップを通じ、軍事主義、ジェンダー、生態系、人権といった多様なテーマを平和の視点で再解釈しています。
身体で覚える平和: テキスト中心の学習から脱却し、演劇、遊び、身振り、アートワークなどのダイナミックな手法を取り入れています。参加者が平和を「頭」ではなく「全身」で体得できるようサポートしています。

3. 国境を越えた連帯
 国際情勢の不安定化が進む中、ピースモモは2022年から「早期警戒レポート(Early Warning Report)」を発行しています。ここでいう「早期警戒」とは、域内の軍事的な緊張を敏感に察知し、武力紛争の可能性を予測することで悲劇を未然に防ぐ「予防外交(Preventive Diplomacy)」を意味します。
 また、2024年には国際平和ビューロー(IPB)や「平和・軍縮・共通の安全保障のためのキャンペーン(CPCDS)」と協力し、「インド太平洋共通の安全保障レポート」を発行しました。このようにピースモモは、国家単位の境界を越え、より広い枠組みの中で実効性のある平和構築のための政策的代案を提示することに注力しています。

結びに:互いの学びが平和になりますように
 平和とは完成された状態として存在するものではなく、私たちが絶えず対話し、実践し続ける時に初めて動き出すものです。 物理的な距離は離れていますが、訪問とこのメールマガジンを通じてつながったピースあいちの皆様と、これからも平和の物語を分かち合えることを願っています。連帯とつながりを通して、市民社会の中で平和の力はより強くなると信じて。いつか直接お会いして、平和の踊りを共に踊れる日を心待ちにしております。 韓国より