資料館と学校の役割◆戦後80年目の「平和学習展」考
岡山 敏明  岐阜県山県市歴史民俗資料館

                                           
 

 令和7年度は、戦後80年という節目に当たるため、この夏、新聞をはじめ関係各施設で戦争体験の特集やパネル展示、そして平和に関連した講演会などが多くありました。
 そんな中、山県市は令和2年度から連続して6回目の平和学習展を行いました。展示内容は昨年度と大きな違いはありませんでしたが、ピ-スあいち様より戦時中の子どものくらしにかかわるパネル(20枚)、戦時中のくらしやこどもの遊びにかかわる現物資料等(53点)を借用しました。
 9月下旬にスタ-トをして約1ヶ月間にわたって開催しました。前年度までは、小学校6年生社会科の授業進度にあわせ1月~2月に行っていました。半年早くしたわけは、今年度は山県市内全ての小中学校で、1年間を通して「平和学習」を実施することが明らかになったためです。それならば、少しでも早く実施した方がよいと考えました。

展覧会場の様子1

 この学校現場の取組は、私たちの展示にとって大きなチャンスでした。それは、小学校1年生から中学校3年生まで、より多くの年齢層の子どもたちが来館することが予想されたからです。思っていた通り、全校で見学に来る学校、同じ学校でも学年別で日にちを変えて来る学校、小規模校どうし学年をそろえて来る学校など、来館の仕方は様々でしたが、昨年度より多くの来館希望がありました。中には他市の小学校からの見学や、人権擁護委員会の皆さんが研修として来館されたケ-スもありました。
 各校の見学後の活動も様々で、資料館が逆に学ばせていただけることも多くありました。見学を活用して、学校では平和の折り鶴活動、平和の歌の合唱、新聞記事を使った平和や戦争に関する切り抜き作品等、各学校独自の方法で工夫し、子どもたちが生き生きと表現をしていました。

展覧会場の様子1

 資料館は、見学の材料を展示できますが、その場で討論したり一人一人にじっくり考えさせたりすることには限界があります。それができるのはやはり学校です。内容や方法を一定の方針のもとに展示し、実際に学びの環境をつくるのは資料館、それを見学し、子どもに平和を深く考えさせ、表現するのは教育の場である学校だと考えます。
 資料館は、見学直前の子どもたちに「平和な世の中だと何でよいのか。それを、80年前の戦争の時と比べて具体的にたくさん見つけてほしい。」と呼びかけてみました。平和であることのよさや価値に気づかなければ、子どもたちも平和を維持しようとは思わないと考えたからです。それがどれほどの効果をあげたのか、まだ評価検証はしていませんが、学校で見学後どんな意見を子どもたちが出したのか、ぜひ知りたいと思っています。