◆所蔵品から◆
資料ナンバー10606 最詳戦局地図(昭和13年)の話 資料班



第13回寄贈品展 第13回寄贈品展

第13回寄贈品展 展示風景 2025年12月撮影

 今月も、第13回寄贈品展「戦後80年 時をつなぐモノたち」の展示資料からご紹介します。

最詳戦局地図 最詳戦局地図

最詳戦局地図

 「新愛知新聞社撰纂 最詳戦局地図」です。中国(当時は中華民国)の地図です。
 左下に発行日、発行元等が書かれていて、それによると発行は「昭和十三年八月」、1938年です。
 どの範囲が載っているかというと、北(上)の端には黄河の一部が見えます。その南の、地図の上で赤くふち取られている部分は河南省です。
 河南省の西、緑のふち取りは陝西(せんせい)省です。地図の上のほうで、左の太線の枠をはみ出して描かれている都市は西安です。
 東側にも緑色のラインが見えます。江蘇(こうそ)省です。タイトルの「最詳」の「詳」の字の横が南京です。

最詳戦局地図 最詳戦局地図 最詳戦局地図

最詳戦局地図

 南京の周辺を拡大してご覧いただきます。画面を横切る水色は長江または揚子江です。河に沿って「揚」「子」という大きい文字も書かれています。「江」は画面外です。
 赤い色でいろいろなマークが描かれています。記号の説明欄の一部もご覧いただきます。大きい爆弾のマークは「投弾箇所」。地図のいたるところにこのマークがあります。都市を探す目安にできるくらいです。そのほか、錨のマークは「開港場及開市場」、飛行機は「主要飛行場」、中に赤い点のある旗は「日本総領事館所在地」、Wのようなマークは「主要無電台」、飛行機が丸でかこまれているのは「支那空軍根拠地」です。南京の場所を表す赤い四角は、「国都」であることを表しています。
 南京の「南」の字の右側には青色で温泉の記号もあります。

最詳戦局地図 最詳戦局地図

最詳戦局地図

 

 河南省の南西の、黄色で囲まれている部分は湖北省です。その中で、赤い爆弾マークが集中しているところを見てみましょう。
 「漢口」「武昌」「漢陽」の地名が見えます。現在の武漢市のあたりです。
 湖が多いのですが、「揚子江」も曲がりくねって流れています。南京よりも上流にあたります。
 地図上の赤い線は、太い点線が「航空路」、細い曲線は「主要道路」です。黒と白が交互になっている線は鉄道です。

最詳戦局地図 最詳戦局地図

最詳戦局地図

 

 地図は3つのパートに分かれています。左下の「成都、重慶、貴陽、雲南方面」から、重慶と広東をご覧いただきます。
 広東のほうには赤い太線と黒の点線が重なった線があります。「香港(英領)」と「澳門(葡領)」がこの線で囲まれています。赤と黒の線は「邦国界」、国境です。澳門は「マカオ」です。ポルトガル領でした。

寄贈品展 「特別展示 軍隊手帳」

寄贈品展 「特別展示 軍隊手帳」

 

 ここまで見ていただいて、かなり細かい地名まで載っている地図だという事もご覧いただけたのではないかと思います。
 少し話が変わりますが、今回の寄贈品展では、「特別展示 軍隊手帳」というコーナーを作りました。過去の寄贈品展で展示した軍隊手帳の中からいくつかを集めて展示しています。軍隊手帳の中身(コピー)が見られるようになっています。書かれている戦歴から足跡を読み取る、というのを目指した展示でもあります。

最詳戦局地図

軍隊手帳「履歴」欄

軍隊手帳「履歴」欄

最詳戦局地図

 

 軍隊手帳の「履歴」欄の一部と、該当する部分の地図をご覧いただきます。線で囲んだ地名「大通」「銅陵」「青陽」が、この地図で見ると近いところにあるのがわかりました。「大通り」なんてどこの町にもあるし、検索が難しくて悩んでいたのですが、この「大通」の可能性が高そうだとわかりました。「揚子江」の近くで、「上陸」という言葉とも合います。
 場所は南京から南西に170kmくらいのところです。

 寄贈品展のお知らせ
 ピースあいち第13回寄贈品展「戦後80年 時をつなぐモノたち」 開催中です。
 2025年は12月26日(金)まで開館、12/27から翌年1/5までは年末年始の休館です。
 2026年は1月6日(火)から開館します。2月21日(土)までです。
 過去1年間の寄贈品を、聞き取りをしたエピソードとともに展示します。
 「特別展示 軍隊手帳」もご覧いただけます。
 関連イベント (入館料で参加いただけます)
 2026年1月24日(土)13:30~15:00
 講演会「寄贈品から見る戦場」
 講師 広中一成さん 愛知学院大学准教授
 講演会は要予約 052-602-4222 ピースあいちまで





詳しい画像はこちらからどうぞ。
https://peace-aichi.com/pdf/20251223_saishouchizu.pdf

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