はじめての『教員のための博物館の日』を実施◆参加者は満足“ふむふむ・・・”

運営委員  高橋 よしの





 『教員のための博物館の日』をはじめて実施しました。
 この企画は、国立科学博物館と共催。“教員に博物館に親しみを持ってもらい、博物館の資源を知ってもらう”ことを目的に、美術館、科学博物館のほか、歴史、天文、考古、民族、自由民権、まんがなど多様な博物館が、今年は全国で78参加しています。国立科学博物館のHPからも、各博物館の開催日程や一覧を見ることができます。

 ピースあいちでの開催は8月21日。少しでも教員の方が参加しやすいようにとの日程設定でしたが、参加者は小学校2名、中学校1名、高校2名、大学2名の7名。さて、参加された方たちは、来てよかったと思えたのだろうかと、案じながらの運営でした。


 当日は2時間のプログラムを組みました。ガイダンスビデオを含むピースあいちの紹介、常設展示の説明と案内、館内の資料と利用上の説明を担当者がしました。
 その後、戦争体験語り手の松下哲子さんが満州からの引き揚げ(1934年満州国生まれ、1946年日本に引き揚げるまで奉天(瀋陽市)ですごす)のお話をしました。

 「熊本の農家に生まれた父親が満鉄に勤務。そこでは日本人だけが恵まれ、設備の良い社宅、国民学校での生活。しかし1944年の冬から暖房も入らない厳しい環境に。8月15日の玉音放送を聞いて母たちは泣いていましたが、自分は戦争に負けたことは信じられませんでした。その日、ピョンヤンでは一晩中花火が上がり、『マンセイ(万歳)』と現地の人が叫んでいました。35年にわたる植民地支配から解放された人たちの喜びの声を、悔しく聞きました。
 1946年8月31日夜、父の故郷熊本にたどり着くのですが、引き揚げの途中、亡くなった人たちを載せたターチョ(大車)を覆うアンぺラ(むしろ)から、黒くなった遺体の手足を見ました。遺体は穴に埋められたそうです。その方たちはどこで、どうなっているのでしょうか。なぜ、中国、東南アジアの多くの人がひどい目にあわなければいけなかったのか。なぜ日本が無謀な戦争を始めたのか…。自分の頭で考えることを、生徒さんたちに話してほしい」と、締めくくりました。
 その日は、松下さんの語り継ぎをしている中川弘美さんも参加され、引き継ぐようになったわけと、あつい心のうちを話されました。

 参加者が一番良かったのは、松下さんの満州からの引き揚げの話を聞けたことだそう。戦争を体験している方の話を直接聞けたこと、また、満州引き揚げという体験も貴重だったと。語り手とその語り継ぎ手の両方の話を聞けたこともよかったとの感想が寄せられました。今後生徒たちへ、日々の授業や話の中で戦争のことを伝えていきたい、学校行事などにピースあいちの資料を活用できないか検討したいなど、それぞれに思いを持ちお帰りになりました。参加者の中には、松下さんや中川さんと話し込む方、展示資料について質問する方などもありました。

 『博物館の日』の実施は、「戦争と平和の博物館」で何ができるのだろうと考えさせられる企画でした。遺品や写真、展示パネルの資料がそれを前にした人に語りかけ、それとの対話を通して思考を深めていく。そんなことを子どもたちができる場を提供するには、どうしたらいいのか。今後も考えていきたいと思うのです。他に、来年への課題として、複数のアンケートに「お互いに交流できたらよかった」との声があり、その時間も含めさらに充実した内容をめざした模索が始まります。
 アンケートにはみなさん「参加してとてもよかった」との回答。多くの方々のご協力のもと、初めての会を何とか開催できました。

【アンケートより】

戦争を経験した方からの直接のお話はとても貴重なことです。ありがとうございます。

実際に戦争を体験された方のお話というのは、近年だんだんと聞くことができなくなってきているので、この機会に聞くことができて、とても貴重な経験となりました。また、満州の視点からのお話も珍しく、とてもよかったです。

満州のお話。満鉄や都市での生活のお話など初めてうかがうことが多く、従来のピースあいちなどでうかがった話とは違った感想を持つことができました。平和は感情ではなく、多くの知識をもとにした論理が必要です。勉強になりました。

他の教員の方々とのお話を聞けた。語り継ぎの方と当事者の方の話が聞けて良かったです。

展示物を見る時にどんな想像力を働かしてほしいか、聞けてよかった。

ピースあいちの沿革、展示、方針を含め、詳細に知ることができた。

貴重な資料について、直接触れさせていただいてよかったです。語り手の方(松下さん)のお話を直接聞けてよかったです。当時の状況の肌感を、当時者のお話で聞くことは、文章で読むのとは全く違いました。

会のスタートに参加している先生方の、教職や参加の理由などをお互いに紹介しあう時間があるといいなと思いました。交流の時間により、話し合いが深まると思います。

ピースあいちの施設について自分の周りには知っている人がほとんどいません。興味ある人も多いと思うので、いろんな方法で知らせてはどうでしょうか。