◆所蔵品から◆
資料ナンバー1532 「尋常小学国史付図 上巻」の話 資料班



尋常小学国史付図 上巻

尋常小学国史付図 上巻 表紙・奥付

 今月は、先月と同じ「尋常小学国史付図 上巻」から、巻頭の「史跡鳥瞰図」をご覧いただきます。
 「尋常小学国史付図 上巻」は昭和13年(1938年)発行、編集者は大阪府教育会です。

尋常小学国史付図上巻「史跡鳥瞰図」

「史跡鳥瞰図」

 最初にご紹介したいのは前回の「所蔵品から」でもご覧いただいた、右下の部分です。

「史跡鳥瞰図」

尋常小学国史付図 上巻 「史跡鳥瞰図」

 

 右手前に富士山が大きく描かれています。
 左手前は浜名湖、少し上に名古屋城らしきお城が見えます。
 中央を横切る3本の水色は、伊勢湾につながる木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)です。奥には琵琶湖が見えます。赤い線と白黒の線は鉄道の路線です。
 文字情報も見てみます。左端手前寄りに赤い字で「名古屋」、右手前に青い四角の中に白い字で「東京」と書かれています。「東京」から斜め左上にたどると「宮城」(皇居)「明治神宮」「多摩陵」(大正天皇陵)と続いて、そのそばにいきなり「多治見」があります。(多治見市は岐阜県にあり、愛知県と接しています)
 なんとなく白い雲が漂っているところで、空間が切り替わっているような描き方になっています。
 名古屋から多治見へ行くにはJRの普通電車に乗ると42分、特急「しなの」で23分です。乗車距離は36.2kmです。
 名古屋から東京は、新幹線「のぞみ」で1時間35分前後、距離は366kmです。地図上では同じくらいの距離に見えますが、実際の距離は約10倍の違いがあります。
 赤い字が一般的な地名または駅名、青い四角に白い文字は都(みやこ)がある(あった)場所、青い字が「史跡」のようです。この区画だと「桶狭間」「関ケ原」「浦賀」などは小学校、中学校の授業でも出てくるのではないでしょうか。そのほかの青文字の場所も、歴史に詳しい方にはなじみのある地名なのだろうと思います。

「史跡鳥瞰図」

「史跡鳥瞰図」 部分

 次にご覧いただくのは右上の区画です。
 ここでも、空間の圧縮と変形についてご覧いただきます。
 左には琵琶湖が、奥には日本海が見えています。赤色の字の地名をたどっていくと、琵琶湖の近くに「敦賀」、そこから右に行くと「福井」「金沢」「富山」、ここで右端、折り返して左に「直江津」「新潟」「佐渡」「青森」「函館」「北海道」「樺太」と描かれています。
 この本で取り上げている「史跡」が少ないところは、かなり省略され、詰め込んで描かれているようです。

「史跡鳥瞰図」

「史跡鳥瞰図」 部分

 鳥瞰図のほぼ中央、大きく詳しく描かれているのは京都の周辺です。
 赤字の「京都」の場所は、今は新幹線も停まる京都駅です。青地に白で「平安京」の文字も見えます。さらに左上に「御所」という文字もあります。 京都の左には、水色が複雑な形で入っているエリアがあり、その中に「淀」と書かれています。桂川・宇治川・木津川の三川が合わさって淀川になるのがこのあたりです。「淀」という地名は知っていましたが、この図で見ると本当に水の多い所だということがわかりました。
 左手前には「奈良」「平城京」が見えます。右下の水色は伊勢湾で、伊勢神宮の「外宮」「内宮」があります。

「史跡鳥瞰図」

「史跡鳥瞰図」 部分

 さらに西、大阪の周辺です。「大阪」の文字があるのは大阪駅、阪急や地下鉄だと梅田駅のあるところです。大阪市内には水路がたくさんありました。
 和歌山や奈良へ向かう鉄道(赤い線)も多く出ています。
 現在(2025年9月)開催中の大阪万博の場所は、この地図では海の上です。「安治川」・「櫻島」と書かれているところの近くです。

 手前には「吉野」「飛鳥」「法隆寺」など、奈良の史跡が描かれています。

尋常小学国史付図上巻「史跡鳥瞰図」

「史跡鳥瞰図」

 左(西)の端まで続けて見ていただきます。
 手前は、「堺」、「岸和田」から「和歌山」と続いています。
 大阪から神戸までは、スペースをとって描かれています。野球のタイガースが好きな方には、「甲子園」や「六甲山」があるところも見ていただきたいです。「尼ヶ崎」「甲子園」「西ノ宮」「御影」と進んでいって、船が集まっているところが「神戸」です。さらに西へ行くと「須磨」で海岸線が折れ曲がって「明石」、「姫路」で折り返し、「岡山」「広島」「小郡」「下関」まで描かれています。
 左端を、和歌山から向こうへたどると、「紀淡海峡」の向こうは「洲本」、淡路島です。さらに海を渡ると「鳴門」。四国を東から見ている感じでしょうか。その向こうが九州で、「別府」「島原」「大宰府」などの文字が見えます。

 

 ところで、「大阪湾」と書かれた海の一部が薄茶色に見えているのは何なのか、というと、

尋常小学国史付図上巻「国史一覧表」」

尋常小学国史付図上巻「国史一覧表」

 鳥瞰図の裏は、先月ご紹介した年表です。
 中段の赤色の帯の色が裏まで染みて、鳥瞰図に茶色の帯ができてしまっています。




詳しい画像はこちらからどうぞ。(先月と同じものです)
https://peace-aichi.com/pdf/20250823_kokushifuzu.pdf

ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからも、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
https://peace-aichi.com/objects/