ドキュメンタリー「戦後80年 東山ゾウ物語」上映会に寄せて
椙山女学園大学 栃窪 優二
「ピースあいち」で7月5日(土)に椙山女学園大学・栃窪ゼミ制作のドキュメンタリー「戦後80年 東山ゾウ物語」(長さ25分)の上映会が開催されます。

作品タイトル
この作品は戦後80年が経過し、戦争体験者の証言を軸にした映像記録の制作・発信が困難な状況になっていることから、若い学生が身近な動物園の出来事を通し、平和の大切さや命の尊さを伝えようと独自に企画・制作したドキュメンタリーです。大勢の人にご覧いただければ幸いです。
栃窪ゼミはジャーナリズム領域、なかでも社会情報を映像で伝えることを活動・研究テーマに、名古屋市など地域と連携・協力して様々な取り組みをしています。これまで「ピースあいち」を紹介する映像や、戦後70年・企画展「竹内浩三の詩とその時代」の映像記録を制作してきました。今回は身近な動物園をテーマにドキュメンタリー制作に挑戦しました。
戦争を生き抜いた東山のアジアゾウ「マカニーとエルド」の物語は、ピースあいちでも詳しく展示紹介されていて、大勢の人に知られています。絵本にもなり子供たちにも語り継がれています。しかし、それだけでは「昔の話」で未来につながりにくいのが現状です。実は東山動植物園は2013年に日本人飼育員チームで日本初のアジアゾウ出産に成功し、その9年後に第2子の出産に成功、ゾウの命を戦前から途絶えることなく未来につないでいます。日本では東山だけです。動物園で飼育されるゾウの出産は、出産後に親がパニックを起こしたり、授乳できなかったりして、とても難しいのが現状です。これまでテレビ等でも東山動植物園の戦前・戦後からアジアゾウ出産成功までを一貫して紹介した映像記録はありませんでした。


栃窪ゼミは2013年の第1子出産時に、東山と連携してテレビ局も取材できなかった出産の舞台裏を撮影し、アジアゾウ出産のドキュメンタリーを制作、YouTube再生回数が270万回を超えています。また第2子出産も東山と共同で映像記録を制作しています。また2017年の東山動植物園・開園80年では、東山と共同で80年の歩みを伝える映像記録を制作しました。そこで今回は、そうした過去の作品映像も活用して、「戦後80年 東山ゾウ物語」を東山動植物園と共同で企画しました。栃窪ゼミでしか制作できないドキュメンタリーと言えるかも知れません。
動物園の役割は、昭和から平成・令和にかけて変わってきて、いまは環境教育や命の教育が大きな目標になっています。その一方、ワシントン条約で絶滅危惧種・動物の売買が禁止され、飼育動物の高齢化による減少を園内で繁殖させて命を未来につなぐ、という新たな課題に直面しています。
今回のドキュメンタリーはメディア情報学科4年生10人と指導教員・栃窪との共同制作です。東山動物園が開園した昭和12年から、戦争を生き抜いたマカニーとエルド、戦後のゾウ列車、それが絵本で語り継がれていること、2013年の第1子誕生、2022年の第2子誕生、そして戦後80年を迎えた2025年、親子3頭が仲良く暮らす様子までを映像記録で追っています。ゼミ学生にとっては、自分たちが取材・撮影した2025年以外のことが多く、とても難しい制作でした。そうした部分は教員が作品構成をサポートしました。


ドキュメンタリーで伝えたいことは平和の大切さと命の尊さです。取材・撮影した学生のメッセージとして未来に向けて映像で発信していることが、今回の作品の大きな特徴です。この映像は「ピースあいち」上映会が本邦初公開になります。そのあと大学サイト等でネット動画公開します。ぜひご覧下さい
上映会 と き 7月5日(土)14:00~
ところ ピースあいち1階交流のひろば
定 員 50名