展示「福島を忘れない ! 被ばくから8年-チェルノブイリ原発事故から34年-」によせて
運営委員 竹内 宏一
3・11福島原発大事故から8年が経過しました。「福島は復興しつつある」との政府の姿勢とは裏腹に、避難地域の縮小や住民の帰還、放射能汚染廃棄物の現状、住民の健康被害など問題は山積し、解決の見通しは立っていません。
1986年に起きたチェルノブイリ原発爆発事故とあわせて、福島の未来を考えていく必要があると考え、3月5日からプチギャラリーで展示を行います。

福島原発事故後の街
福島原発周辺地域では、「空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下になることが確実であること」が、避難指示地区解除の要件の一つとされています。年間被ばく線量が1ミリシーベルトを超えるような居住地でも、政府の政策として帰還がすすめられています。

チェルノブイリ原発を覆う金属ドーム
一方、チェルノブイリ原発周辺では、32年余を経た今も原発周辺半径30キロ圏内は立入禁止区域です。そして「チェルノブイリ法」は、年間1ミリシーベルトを基準に、移住・避難・保養・医療健診等を保障しています。
ここでは、チェルノブイリ原発事故の現状について報告します。
◇チェルノブイリ原発事故とは ?
事故は、1986年4月26日にソ連邦(現 ウクライナ共和国キエフ州)で発生しました。チェルノブイリ原発4号炉(100万kw)の動作実験中に核暴走し爆発した大惨事で、国際基準で「レベル7」の深刻な事故です。
【註】 レベル1~レベル7まであり、レベル7が最悪事故。福島原発事故もレベル7。
当初、ソ連当局の事故隠蔽などで避難誘導等対応が立ち遅れ、史上最悪の人的被害となった。ソ連政府は、事故処理にあたった運転員・消防士等33名が亡くなったと発表したが、その後、IAEA(国際原子力機関)が死者4000人と公式発表した。
【註】長期的には死者数万人とも言われる。(環境団体「グリーンピース」)
事故炉は放射能の拡散を防ぐために「石棺」(コンクリート)で覆われていましたが、地盤沈下等で壊れたので、2017年11月に、その上をさらに新たな金属ドームで覆い、やっと解体が始まりました。廃炉までには500年かかると言われています。
◇ベラルーシ「チェルノブイリ法」とは?
チェルノブイリ原発は、事故当時ソ連邦(現ウクライナ共和国北部)に位置しており、ロシア・ベラルーシの国境の近くでした。事故後の風向きなどにより、特にベラルーシ共和国の被害が最も大きく、放射性物質の約70%がベラルーシに降り注ぎ、国土の23%が汚染されました。
「チェルノブイリ法」はチェルノブイリ原発事故後、1991年に旧ソ連邦で制定され、ソ連邦崩壊後、ロシア・ウクライナ・ベラルーシに引き継がれたもので、国家の加害責任を明確にし、予防原則により生存権を保障した放射能災害に関する世界初の人権法です。年間1ミリシーベルトを基準に、移住・避難・保養・医療健診等が保障されています。
年間5ミリシーベルト以上の地域は「強制移住区域」で、立入りには特別の許可証が必要です。土壌・木材等の搬出やすべての森林利用・放牧・狩猟・漁獲が禁止され、インフラ施設の維持管理に関する活動は厳しい制限のもとで認められています。その地域で生産された商品は、基準を超えない放射線濃度であれば販売が許可されています。
年間1~5ミリシーベルトの地域は「移住の権利」が与えられ、移住先で雇用と住居が提供されています。
年間0.5~1シーベルトの地域は定期放射線管理対象居住区域で、「放射線管理強化ゾーン」として保養・医療健診が保障され、徹底的なモニタニングが実施されています。
【註】「自然放射能 + 年間1ミリシーベルト」が一般人の国際基準となっている。(シーベルト(SV)は人体への被ばく線量を表すもの。 1SV=1000mSV、 1mSV=1000μSV(マイクロシーベルト)
◇「チェルノブイリ法」による主な支援内容
・放射能汚染地域の居住者は、他の地域へ移住できる権利を持ちます。移住の際旧住居にあった家具・家畜等は汚染のため移動禁止、その賠償金は補償されています。
・上記移住で転職する場合は優先雇用され、また国が用意した住居へ優先入居が保障されます。
・家庭の扶養者が就職活動中、一定の生活助成金が支給されます。
・高等教育機関への進学希望者は、優先入学できるなど。
◇立入禁止区域(避難区域)とは
チェルノブイリ原発周辺地域(半径30㎞圏+土壌汚染濃度で一定の基準を超える地域)で、その基準は、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム(238・239・240)の汚染濃度基準で区分されています。この地域では、住民の居住、無許可の滞在が禁止されるほか、無許可の車両搬入、諸資材・植物等の搬出が禁止されています。
◆「福島とチェルノブイリ 現状は? 」講演会
*期 日 3月9日(土) 午後1時30分~3時
*会 場 ピースあいち 1階
*講 演 ①チェルノブイリ原発周辺の現状報告
講師 戸村京子さん (チェルノブイリ救援中部 初代理事長)
②福島原発事故から8年 ―現状は?
講師 河田昌東さん (チェルノブイリ救援中部 理事)