◆企画展「2016年沖縄展 辺野古から沖縄・日本を考える」によせて◆
「辺野古展」からくみ取っていただきたいこと
「沖縄展」チーム 阪井 芳貴(名古屋市立大学教授)
「ピースあいち」では、毎年6月23日の沖縄慰霊の日をはさむ期間に沖縄関連の企画展が開かれます。沖縄に関わり、沖縄からさまざまな恵みを受けている立場として、本当にありがたいことだと思っています。
今年は、従来の沖縄戦を中心にした展覧会ではなく、今現在沖縄をゆるがせている普天間飛行場の移設=辺野古新基地建設問題を取り上げることになりました。非常に難しい問題ですが、しかし、決して沖縄だけの問題ではなく日本全体の問題であることを強く意識して準備にあたっているところです。
このテーマ設定は、昨夏の「ピースあいち」スタッフの沖縄スタディツアーの成果から導かれたといっても過言ではありません。やはり、今の沖縄を直視したことと、今に直接つながる歴史の語りが大きなインパクトを及ぼしたのだと思います。そのことを踏まえ、この「辺野古展」を構想するにあたり、私は展覧会タイトルと重要なポイントについて、以下のように考え、スタッフの皆さんにお示ししました。
すなわち、タイトルは、「「沖縄差別」の始原と現在 -<琉球・沖縄vsヤマト・日本>の歴史から-」を提案しました。結局これは採用されませんでしたが、その代わりにこの展示のコンセプトを理解していただき、展示の内容をそこに照準を合わせる工夫をしていただくことに落ち着きました。

辺野古沖の長島から撮ったキャンプシュワブ(2009年筆者撮影)
そのコンセプトとは、
普天間飛行場の移設問題が、辺野古への移設へ回帰して以来、沖縄県内では「沖縄差別」という言説が急速に拡がった。ところが、本土ではその言説への認知度も、そうした状況に対する認識も極めて低い。そのギャップがますます対立構造を深刻化しているのが現実である。この「沖縄差別」を切り口として、知られざる琉球・沖縄の歴史を確認することから、ウチナーンチュの意識や思いへの理解を深める一歩とする。
さらに、展示内容につきましては、以下の柱を意識していただくことをお願いしました。
①琉球・沖縄の4つの大きな時代の節目<世替わり>
②この4つの世替わりが「沖縄差別」の契機となってきた
③「同化」
④「復帰」の本質
⑤真実が明らかにされつつある「沖縄返還」の実態
⑥「復帰」に期待したこと:結局「本土並み」に集約できる
⑦「復帰」の結果:多くの分野で44年後も本土並みはほど遠い
⑧沖縄内部における言説の変遷
⑨翁長県知事のこだわり・・・・歴史の正しい認識
⑩最大の課題:ヤマトゥンチュの無理解無関心という壁の打破

キャンプシュワブゲート前の抗議の様子
(2015年夏筆者撮影)
これについても、すべてが網羅されたわけではありませんし、表現もこのまま採用してはおりませんが、私の意図するところをスタッフ全員がご理解くださり、内容的にはほぼこれに沿ったパネルが作成されることと思います。
この辺野古展の準備が始まった頃には想像もできなかった「和解」が国と沖縄県との間に成立はしましたが、本当の闘いはこれからなのだろうと思います。刻々変わる情勢への目配り、沖縄県民の思いへの理解、残念ながら存在するウチナーとヤマトとの間の溝(ないし壁)をなくす努力が、私たちにこそ求められていることを、多くの方が今年の企画展からくみ取っていただければと期待しています。