◆常設展の展示リニューアル◆第2展示「戦争の全体像―十五年戦争」の概要
事務局長 宮原大輔

                   



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作業風景

 常設展の第1展示「愛知県下の空襲」、第3展示「戦時下のくらし」コーナーに続き、残っていた第2展示「戦争の全体像―十五年戦争」のリニューアルを4月10日に行いました。
 以下、このリニューアルの主なところを記します。(文中、今後作業予定の内容が一部含まれています。)

 

1. 十五年戦争の節目に合った資料を選びました。
→「満州国全図」 当時の地図に「満州国」の国境が引かれています。隣の「満州国紙幣・ 硬貨」とあわせて、「満州国」が独立国であるという意図が伝わるものです。また歴史に登場する場所に矢印をつけて、わかりやすくなるようにしました。
そのほかには、
→1937(昭和12)年12月13日の南京占領を伝える「国際写真情報」(1938年2月1日発行)
→宣戦布告を伝える1941年12月8日の新聞
→「大東亜共栄圏」建設に向けた「大東亜会議」の開催を伝える1943(昭和18)年11月8日の新聞
→終戦の日の中部日本新聞

 
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左:満州国全図 右:終戦の日の中日新聞

2. 資料の一つひとつに説明を付けました。
 これまでのキャプションは資料名だけで、しかも数点まとめて書いてあったので、資料の内容や見どころがわかりませんでした。今回は資料の一つひとつに説明を付けました。資料の何が見どころなのかを解説してあり、個々の資料=物を通じて戦争の全体像に近づいていこうとする狙いです。また、小学生にも読みやすいようにルビを多く振りました。

3. 軍隊生活がどのようなものであったのか、資料で展示しました。
 「徴兵身体検査通達書」、「入営命令書」、「軍隊生活 入営から除隊まで」(漫画風のカード)、「奉公袋」、「軍隊手帳」、硫黄島で戦死した「川村恒夫さん関係資料」、「軍事郵便 はがき」、「岐阜市の小林太一さんの遺書、遺髪」、「死亡告知書」など。
 また、東条英機の音声による「戦陣訓」のレコードをDVD化して、文章表示とともに視聴できるようにしました。

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左:軍隊生活 右:東条英機の戦陣訓

4. 墨塗りや破り取られた教科書を展示しました。
 墨塗りや破り取られたページを元の状態の写真と合わせて展示して、戦後に教科書のどこが問題とされたのかを見比べられるようにしました。

5. 立体展示を設けました。
 軍服、背嚢、ヘルメット、水筒などを人形の形で展示しました。また人形の背景の壁面に「日章旗、旭日旗」を展示しました。

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左:黒塗り・破り取られた教科書 右:立体展示

6. 戦争と文学のコーナーを設け、5点の書籍を展示しました。
1)小林多喜二『蟹工船』『1928年3月15日』初版復刻版。
2)火野葦平『麦と兵隊』初版本。中国での日本軍の実態を描き出しました。
3)『中央公論』昭和13年3月号。石川達三「生きている兵隊」が多数の伏字で掲載されましたが、即日発禁となり店頭から消えた貴重な一冊です。
4)戦後まもなく石川達三の『生きている兵隊』が伏字なしで発行された完全本です。
5)宮本百合子『播州平野』。宮本百合子が1945年8月15日を歴史の転換として描き出しています。

 

7. 『あたらしい憲法のはなし』の初版本と複製本。
 『あたらしい憲法のはなし』はこれまで複製本を展示していましたが、今回初版本の寄贈がありましたので、表紙は初版本、中のページは複製本で展示しました。

8. 資料の保護と見やすくする目的で、アクリルケースに収めました。

 
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左:戦争と文学のコーナー 右:『新しい憲法の話』