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「天野鎮雄が読む・"愛知一中予科練総決起事件"
 嵐のあとに  ~ある少年と家族の記録~」 朗読台本を構成して
南山国際高校教諭  馬場 豊



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朗読会の様子


 昨年12月8日から今年2月18日まで開いた「第2回寄贈品展」では、市民のみなさんから寄せられた戦争時代の品々約150点を展示しました。そこには、15歳で志願兵になり17歳で戦死した愛知一中(現 愛知県立旭丘高校)の鈴木忠熈さんが、家族や友人に遺したたくさんの手紙があり、また期間中には「愛知一中志願兵の遺品は語る」のテーマで、弟さんのお話を聞く会も開きました。
 そんなご縁で、6月16日に開かれたのが、朗読会「天野鎮雄が読む"愛知一中予科練総決起事件"嵐の後に~ある少年と家族の記録~」。オリジナルの台本を作っていただいたのは馬場豊さんです。


 朗読台本作成のお話をいただいたのは、昨年末でした。鈴木家からピースあいちに寄贈された、鈴木忠熈さんの遺品を拝見し、意欲がわきました。父・信保氏が書きつづった丹念な日記、忠熈さんが家族にあてた60枚のはがき。
 まず、すべてに目を通し、それをどのようにまとめて行くかの検討に入りました。日記もはがきも書き手の思いがあふれていて、また一方では言葉に言い尽くせないものが秘められているとも感じました。
 いったい、「総決起事件」はどのような経緯で起きたのか。学校、家族、世間は、どう動いたか。そして当の学生たちは・・・。

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寄贈品展より

 事件当時、在校生だった江藤千秋氏が後に母校の教員として赴任し、丹念な取材を経て書き著した「積乱雲の彼方に」という労作があります。これを読み解き、台本にも一部再構成して取り入れさせていただくことにし、ピースあいちから出版元の了承を得ていただきました。
 朗読の前半で事件の経過を明らかにしていくとともに、後半で鈴木家のたどったその後を日記・はがきを主にして描くことにしました。日記の記述は詳細で、どこを取り出すか難しいものがありましたが、家族の様子やとりわけ父親の心情が表現されている所、町内の動きなど世相がわかる所などをもとに構成して行きました。はがきには、家族を思いやる切々とした心情、十代半ばのういういしさ、けなげさが読み取れます。そして、十代とは思えぬ言葉遣いのきめ細かさや配慮も。

 忠熈さんは、1943(昭和18)年9月に松山海軍航空隊に入隊し、1945年5月に南西諸島方面で戦死しました。700名余の若者が「総決起」し、その後さまざまな紆余曲折を経て56名が入隊、忠熈さんを含め5名が戦死を遂げました。
 今回の朗読会は、関連資料が遺族から寄贈され、俳優の天野鎮雄氏が強く興味を示され、朗読したいとおっしゃったことがはずみをつけ、朗読会の実現となりました。当日の聴衆は、80名を超え、天野氏の朗読に聴き入りました。その朗読は、「魂のこもった」と言えるような迫真力と熱情を感じさせる素晴らしいものでありました。この朗読会に携われたことに感謝します。(2012.7.18)