「音」ではなく、「声」を届けた。原発反対10万人集会 ボランティア 野田 隆稔

会場の様子
7月16日、第9条の仲間とピースあいちの仲間18人で、東京の集会に参加して来ました。会場の代々木公園は人人、人で一杯でした。表参道から会場に着くまでほぼ30分、東京の第9条の仲間が場所を確保しておいてくれたので、中央のわりといい席に座れました。
主催者発表は17万人、警視庁は7万前後、NHKでは7.5万人と報道していました。会場は4ヶ所でしたから、10万人は越えていたと思います。
会場の中の幟(のぼり)を見ると、北は北海道、南は沖縄と全国から参加していたと思います。
面白いことに,金光教から、南無法蓮華教、キリスト教の幟(のぼり)があったことです。宗教団体も反対していると言うことが分かります。私の視覚の範囲の中には公明党の母胎の宗教団体の幟が見当たりませんでした。たぶん、見落としたのでしょう。共産党や新社会党の幟もありましたが、労働組合や政党が指導できない所に日本の反権力闘争の弱さがあると思いました。政党や組合よしっかりしろと言いたい。また、学生自治会の旗がなかったことも寂しいでことした。私は安後世代で、大学紛争の前の世代ですから、大きな学生運動の経験はありませんでしたが、デモや集会に行けば大学の自治会の旗が翻って(ひるがえって)いました、隔世の感ありです。
集会は小室等の歌から

小室等と佐高信
集会は小室等の歌から始まりました。そこに、永六輔と佐高信さんがかけつけて来ました。永さんが車椅子で登場したのには驚きました。佐高さんは近藤駿介や斑目春樹が未だ要職にとどまっているのは恥だと怒っていました。この2人は原子力村の張本人で、原発事故の責任者です。
会を司会したのは講談師の若い女性で神田香織さんでした。神田香織さんについては、私は全く知りませんでしたが、「はだしのゲン」や「チェルノブイリの祈り」などを題材に講談しているという有名な人だそうです。福島県出身で実家が被災されたそうです。声もよくとおり、落ち着いた司会でよかったです。福島弁での喋りはよくわかりませんでしたが、福島人の怒りと悲しみを言ったと言う事はよく理解できました。
式が始まる頃から、報道関係のヘリコプターが5台が空を飛び、騒音を振りまき、隣の女性が「妨害しているのでは」と言うほどうるさかった。
トップバッターは坂本龍一さん。スマホに書かれた原稿を見ながら「日本の市民が再び声を上げたことは感無量です。たかが電気のためになんで命を危険にさらさなければならないのでしょう。子供たちを守りましょう。日本の国土を守りましょう。2050年には電気は家庭や事業所で自家発電するという社会になって欲しい」と呼びかけました。彼は仕事があるとの事で、すぐに会場から去った。
「国敗れて山河あり」は杜甫の詩ですが、「原発が破れると山河もなくなる」から、原発はやめねばなりません。。
佐高信が経済の良識者、城山三郎―内橋克人とし、絶賛する内橋克人さんは「一部で起きている脱原発運動への攻撃などを批判し、合意なき国策の上に、日本中に原発が造られてきたことにさようならの声を上げよう。福島の悲劇に学ぼうとしない政治家を二度と国会に送ってはならない。子どもや孫の為の私たちの責任である」と訴えました。私は彼の信奉者の一人ですから、彼が唱えるFEC(食料・エネルギー・医療や介護)は地域での実践を聞きたいというおもいもありました。
大江健三郎さんは「760万人の署名を持って国会の藤村官房長官に提出した。彼は何も云わなかったが、其の後、野田政権は大飯原発の再稼動を決めた」「私たちは侮辱されていると感じた」と語気を強め「政府の目論見を打ち倒さねばならない、それは必ず出来る。しっかりとやり続けましょう」と訥々と語られた。
鎌田慧さんは、14日に名古屋の高校生が運営しているサマーセミナーの講師で講演されたばかりです。「国民の生命と財産を無視するような政府を、徹底的に弾劾していく。原発はただちにゼロにすべきだ」といい、さらに鎌田さんは政府のエネルギー・環境会議の意見公募に「原発ゼロ」の意見を送るようにしようと提案しました。
落合恵子さんは「大切なものは」と。この時、会場の子どもから声がかかりました。落合さんは「子どもの声っていいですね。この子たちの未来のために生命を大切にしましょう」と会場の声を取り上げながら語りました。
落合さんは「野田政権に聞く、あなたが国民というとき、誰を見ているのか、ここに来ている人たちが国民であり市民である。人も、動物も、植物も、山も、水もすべてが生命なのだ。原発は全ての生命を破壊する、経済より生命の方が大事なのだ。」と。全ての生命を大切にする為に頑張りましょうと透きとおる声で話しました。財界や政界、腐りきった官僚たち(佐高さんの言葉)には命の問題は出てこない。

澤地久恵さん
次に、麦藁帽のような帽子をかぶり、白いシャツで登場したのが澤地久恵さん。山田昌や岩本多代、山口果林などが演じた『この子たちの夏』と言う有名な朗読劇があったが、その出演者たちのいでたちを一瞬思い出しました。澤地さんは体が悪いと聞いていたが、80歳とは思えない、お元気でよく澄みとおる声で「政府は日本人から故郷を奪った。小さい国土にふさわしい規模で、生まれてよかったと思う国にしなければ」と言うことを訴えられた。生まれてよかったという国という言葉を聴いたとき、ジーンときました。孫のためにそういう国にしなければと、孫の顔が浮かびました。(上の写真は澤地久恵さん)
ひときわ拍手が多かったのは瀬戸内寂聴さん、90歳だと言うのにお元気です。この集会にも多くの高年者が参加しておられるが、その人たちだけでなく、彼女に言わせれば洟垂れ小僧の私たちにも勇気を与えてくれる話でした。
開口一番「冥土の土産に皆さんの姿を見たかった。今の状況を見ていると、絶望的になり心が折れそうになるが、運動なんてもともとすんなりと上手くいくわけがない。政府への言い分、口に出して言えばいい、体に表せばいい。駄目であっても言っていくことが大事だ。諦めたら終わりだ。私は若い頃、人権が保障されていない中で、苦しみながら闘ってきた女性を多く描いた。今、それをリライトして出版している。わりと若い子が読んでくれている」と、粘り強く闘う必要性を強調されました。
広瀬隆さんが飛び入り参加され、恐ろしいことを言われました。「東日本大地震で、ロシアの極東地域にも構造変化が現れている。太平洋プレートの変化である。それは福井県に続いており、福井に地震が起きる可能性は強い。大飯の下には活断層があり、太平洋プレートに連動して動けば原発はひとたまりもない。とにかく原発をやめることだ。そのためには電気料金の値上を認めることだ。それはそう大した額ではない。昨年から、今年にかけて蓄電機が多く売れた。大企業や大病院は関電が言うような電力不足(絶対起きないと思うが)の時にそれを使えば生産の影響は無い。一番心配しているのは中小企業である。内橋さんがそのあたりの解決を探してくれるだろう」と、政府やマスコミでは報道しないことが聞けて勉強になりました。
小浜の闘い

オレンジの服を着ている女性がトラブルを起こした。左は広瀬さん
大飯原発のある福井の小浜で原発反対闘争を続けておられる中嶌哲演住職が、「大飯原発再稼動は死刑判決を受けたようなものだ。住民を無視した巨大な利権構造がある。小浜は原発を拒否した永い歴史を持っている。賛成しているのは利権構造にからみとられた福井知事と立地の住民、その中でも反対者が出てきている。福井県民の大半は反対している。」と現状を話された。
最後に福島から来た武藤類子さんが、「この1年、被災者同士を分断する動きや攻撃などさまざまなことがあったが、一人ひとりが出来ることをやってきた。この会場にも参加している関さん(私にはそう聞こえた)は、一人で汚染土を運び訴えてきた。最初は一人であったが、次第に仲間が増えた。今日は二本松から汚染土を持って10人ぐらいの仲間と会場に来ている。経産省・東電に汚染土を持っていくという。」そんな紹介をされた後、「絶望こそ希望だという言葉がある。声なき声を上げ、分断されることなく、ともに歩んで行こう」とせつせつと訴えられた。
その後、私たちはデモに参加しました。通りに出るまで1時間ぐらいかかりましたが、その後は、デモ用の道路が確保されており、スムーズでした。