MOVIE◆ライフ・イズ・ビューティフル               廣瀬 眞由美


 8月14日に観た映画(「ピースあいち」で毎月第2土曜、午後4時半から映画による勉強会をやっている)が、とても感動的だったので、ご紹介させてください。
 後で調べたら、1998年カンヌ国際映画祭審査員グランプリ受賞、99年アカデミー賞3部門受賞(主演男優賞/外国語映画賞/作曲賞)ほか、世界各国で数々の栄誉に輝いた映画でした。
 それほど高い評価を得た理由は、90年代のチャップリンと称されているロベルト・ベニーニ監督・主役の才能も大きいでしょうが、とにかく、いろいろな世代の人たちに是非、一度は、観てほしい最高におもしろくて切ない感動作品です。


 映画は、1937年、イタリア・トスカーナ地方の美しい小さな町アレッツォにやってきたユダヤ系イタリア人グイド(ロベルト・ベニーニ)と小学校教師ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)との出会いから始まります。
 イケメンでもなく、かっこ良くもなく、お金もなさそうで、定職にもついてなさそうなチャラ男が、運命的な恋に落ちたとばかり、美しい大人の女性ドーラに猛アタックする前半は、一歩間違えば、ストーカー映画(?) が、そこはイタリア映画ですから、笑いのセンスあふれた一級品のラブ・コメディです。
 町の役人と婚約していたドーラは、全身で愛情を表現するグイドの機転と優しい愉快な性格に、いつのまにか心を奪われてしまいます。

 

 後半は、夢だった本屋を開いたグイド夫妻と愛しい一人息子ジョズエ(ジョルジオ・カンタリー二)をムッソリーニによるファシズム政権下、ユダヤ人迫害の嵐が、襲います。
 絶望と死の恐怖たちこめるナチス収容所で、幼い息子を生きながらえさせようと、豊かな想像力を駆使し、ジョズエに、「これは、お気に入りの戦車を得るためのゲームだ」と信じさせ、必死に嘘をつくグイド。強制労働で疲れた身体に鞭打って頑張ります。
 命がけの嘘がもたらした奇跡の最後は、ずっとグイドの言いつけを守り、おしゃべりを封印していたジョズエが、母を見つけて叫ぶ「ママ~」の大きな声、ようやく会え、抱き合う母子、涙、涙。そして、グイドは、もういないという喪失感。
 ホロコーストを題材にしつつ、戦争の悲惨さ、愚かさを皮肉り、強靭な愛の尊さ、命の素晴らしさを訴えた秀逸の映画でしょう。


 最後に、この映画の中で、ちょっとだけ登場する「なぞなぞ」好きなドイツ人医師レッシング(ホルスト・ブッフホルツ)に注目したい。
 彼は、前半では、グイドの働くホテルの客として「なぞなぞ」で親しくなり、後半では、収容所の中で、グイドが一瞬、助けの綱として望みをかけるが、レッシングにとっては、「なぞなぞ」の答えの方が大事だと思い知らせ、絶望の淵に追いやるという役どころです。
 医者といえば、科学者であり、人を助ける職種である彼が、現実の悲惨さに眼をつぶり、「なぞなぞ」に没頭する姿は、もしかしたら、平和に生きる私たちの姿ではないでしょうか?