第13回寄贈品展 特別展示「軍隊手帳」
ボランティア  土井 亜由美

                                           




 第13回寄贈品展が昨年12月2日から開催されています。今回は特別展示として、これまでに寄贈された軍隊手帳(軍隊手牒)を取り上げ、軍隊手帳とはどのようなものか、そこに何が記されていたのかを紹介しています。

 軍隊手帳は、陸軍軍人全員に支給された手帳で、身分証明書であり、同時に履歴書でもありました。冒頭には軍人勅諭など、軍人としての心構えが記され、続くページには所属部隊や階級、出身地などの基本情報が並びます。さらに、軍服や装備のサイズまで細かく記されており、当時の兵士の体格や軍隊生活の一端を知る貴重な資料となっています。

 また、軍隊手帳には、「特業」という欄があります。これは兵士がどのような技能を持ち、どのような役割を担っていたのかを示すものです。例えば、「鳩」と記された兵士は、通信が途絶えやすい戦場で伝書鳩を使って連絡を行う特殊任務に就いていました。「縫工」とある兵士は、破れた軍服や装備を修繕する技術を持っていました。特業欄を手がかりに、兵士ひとりひとりの得意分野や任務が見えてきます。


 展示では、このような手帳を通して9名の兵士が歩んだ戦争の道のりをたどりました。寄贈された手帳から軍歴を読み解き、その足取りを地図上に可視化しています。名古屋周辺の連隊区から徴兵された兵士が多かったため、足跡は華中方面に集中しています。しかし、同じ地域へ向かったとしても、歩んだ道はひとりひとり異なります。戦死した兵士の足跡は途中で途切れ、生還した兵士の記録は帰還後の生活へと続いていきます。地図上の印をたどると、戦場を生きた兵士のそれぞれの歩みが浮かび上がってきます。

 これらの足取りを見つめていると、私自身の祖父の姿が重なります。祖父もまた歩兵第六連隊の補充兵として日中戦争に参加し、帰還することはありませんでした。軍隊手帳は残っていませんが、同じ連隊区から出征した兵士たちの記録をたどると、祖父もきっとこの地図のどこかを歩き、同じ川を渡り、同じ山を越えたのだろうと想像せずにはいられません。


 個人の記録を通して戦争を見つめ直すことで、歴史はより身近に、具体的なものとして見えてきます。小さな手帳に刻まれた文字を通して、戦場に生きた人々の姿に思いを寄せていただければ幸いです。