2025年を振り返って        
事務局長  赤澤 ゆかり

                                           
 

 この一年は、コロナ禍以前に戻ったように、生徒や学生さん、団体の来館が増えました。
 夏休みに大学生6人、高校生6人が各学校からの派遣でボランティアに参加しました。「最初は緊張したけど、みなさん優しくて家族みたいな感じで、『平和ってこういうとこから』って思いました」「ゴミを入れて捨ててもらえばと小さな紙箱を折って机に置いたら、誰かが折り紙の鶴を入れておいてくれて感動しました」などと話してくださったのが思い出されます。(折り鶴の入った紙箱はまだ置いてありますよ。)その後も引き続きピースあいちのボランティア活動に参加してくださる方もいます。
 惜しまれながら、高齢になったからと卒業していかれるボランティアさんもおられました。一方で、高校生から幅広い大人までが新たに参加してくださって、新しい活力も生まれています。

 2025年は「戦後80年」ということで、戦争と平和に関するさまざまな企画やイベントが開催されました。ピースあいちも「戦後80年事業」として、「戦後80年 平和な未来のために 今 知る 考える 動く 伝える」をテーマに8つのプロジェクトを進めました。


プロジェクト1.1階常設展示「現代の戦争と平和」のリニューアル

 過去10年間の出来事を加え、5月に完成しました。世界の戦争・紛争の拡大や核保有国・核弾頭数の表示のほか、核兵器禁止条約の発効・批准国の状況、また「日本原水爆被害者団体協議会」への2024年ノーベル平和賞授与ほかを加えました。


プロジェクト2.「Z世代と戦争」体験型ロールプレイングの開催

 ピースあいちの「次世代交流チーム」が考案、2年かけて作り上げた戦争と平和を考える「体験型ロールプレイングゲーム」を4回行い、参加者から大きな反響がありました。今後もさらにブラッシュアップしていきます。 


プロジェクト3.戦争体験の語り動画のアーカイブ化

 ピースあいちの「戦争体験の語り事業」で語ってくださった方々のお話を後世に残し、平和学習に活用していけるよう、撮りためた90名の語り動画のアーカイブを整備し、館内で視聴できるようにしました。


プロジェクト4.夏企画「学び舎から戦場へ」の開催(7月22日~9月13日)

 「学徒出陣」「予科練志願」「特攻」。戦況の悪化により、戦争末期には多くの若者が学び舎を去り、戦地へ赴きました。その過程で何が起こっていたのか、この地域ではどうだったのか。テーマごとに調査をして紹介しました。


プロジェクト5.夏企画「ピースあいち戦争体験の語り事業」の開催(7月22日~9月13日)
 開館時から行ってきた「戦争体験の語り事業」を総括し、また、次の時代に何をすべきか考えました。その後、11月に「ピースあいち語り手の会」と「語り継ぎ手の会」を統合し、「戦争体験を語り継ぐ会」を発足させました。語り手、語り継ぎ手が手を携えて、平和のための活動をしていきます。


プロジェクト6.戦争体験談集の発行
 12月に第5集となる体験談集を発行しました。今までで最多の59名の方からご応募いただきました。



プロジェクト7.「差別と偏見について考える」ワークショップの開催

 「平和とは何か」という問いから始まり、「差別と偏見」について考えようと、ボランティアの勉強会という形で2回のワークショップを開催しました。ピースあいちとして初めて取り組んだテーマです。引き続き掘り下げていけたらと思います。


プロジェクト8.「来館者のメッセージ」で平和の作品づくり

 4月~7月は「ちょうちょ」、8月~11月は「アオギリ」をモチーフにした作品を来館者と一緒に作りました。12月~3月は「翼」がモチーフです。


 昨年の事業とのつながりで、今までと一味違う「空襲展」が企画できたのも今年でした。2022年10月から始めた常設展示の英語翻訳が昨年3月に完成し、そのPRに行った名古屋国際センターのご紹介で、ボブ・フレミングさん(米国バッファロー市在住)がピースあいちを訪問されたのは5月。
 持参された軍事任務証明書は、1944年11月27日から翌年5月16日までボブさんの父親がB29に乗務した記録で、名古屋を8回攻撃していました。そこで、ピースあいちの研究資料や証言と、その飛行記録等をもとに、2025名古屋空襲展「80年前、父は名古屋を焼き尽くした―B29搭乗員の記録から(3月11日~4月26日)」を企画。地上と空の二つの視点で戦争がもたらす実態を見ていきました。ボブさん制作の映画「しがみつき、燃え続ける(名古屋を消す)」“CLINGS AND BURNS (ERASING NAGOYA)”上映 と交流会も開催。今でも交流は続いています。


 依然、世界の戦争や紛争は収束の様子なく、日本でも軍事優先色が濃くなりつつあります。そんな時代だからこそ、戦争と平和について学び、考え、話し合う場所としてのピースあいち、そして戦争の実相を伝えていく活動は、ますます大切になるでしょう。新しい年も、共に歩んでいきましょう。