夏の企画展「学び舎から戦場へ」に関わって ◆「特攻」講演会

語り継ぎ手の会  佐々木 陽子





 私とピースあいちとの出会いは戦後75年語り継ぎ手ボランティア育成プロジェクトである。語り継ぎの活動で仲間を得て、私たちはいろんなことを話すようになった。心に響いた映画や本を共有したりしているうちに、戦後80年プロジェクトの話もするようになった。この「学び舎から戦場へ」企画について私自身は特に知識があるわけでもなかったが、子を持つ親としてわが子を、またその次の世代を戦場に向かわせるようなことは決してあってはならないという気持ちは自然とあったし、知らないからこそ知りたい、と思った。

 特攻の担当にはなったものの、ほぼ未知の世界である。どうしてそんな作戦が存在したのか、どうやって始まったのか、そしてどうやって終わったのか。ひとまず本だ、と思い立ち、普段行くことのあまりない図書館に通った。そして特攻には実にたくさんの人の思惑が存在し、その一人一人が苦悩していたこと、それでも進むしかなかった戦況や情勢に思いをはせるようになった。

 そういう私の学習の題材のひとつが加藤拓さんの著書『特攻のメカニズム』だった。この本では、特攻の現場や生還した特攻兵に起こっていたこと等を知ることができるだけでなく、現代の日本社会に関連付けての考察が随所に出てきたところが新鮮だった。

 加藤拓さんの講演が実現し、当日はピースの1階を埋め尽くす満席で、参加者の“ほう”とか“うんうん”とかいう反応や熱心にメモを取る姿が関心の高さを物語っていた。
 講演が終わっても質問をしたい人の列がなかなか途切れず、閉館時間をお知らせしてやっと退席していただいたほどの盛況ぶりであった。

 特攻は志願か命令か問題について、人選の方法は一律ではなかったことは証言からもうかがえるが、当時の戦況から生きて終戦を迎えるという未来は想像できなかった、どうせ死ぬなら特攻で、という思考があったとしても不思議ではないという説明にはとても納得がいった。
 冒頭に紹介されたインタビュー動画で、あなたは国のために死ねますか?との問いに対し、若者は一様に死ねないと答える。しかし会場では再生されなかった後半部分の、でも家族のためだったら?大切な人を守るためだったら?周りの仲間がみんな志願したら?と問いを進めていくと、死ぬという選択をするかもしれない、と変わる人が出てくるのだという続きの内容が紹介された。
 誰も積極的に戦争したいとは思っていない。自分が国のために死ぬなんて想像もしていない。しかし、もしかして、もしかして、条件がそろったら、その選択をしてしまうかもしれないという、恐ろしい話だ。
 そんな選択をする場面が決して来ることのないように過去から学び、自分はどうあるべきなのかこれからも考え続けていきたい。