企画展「沖縄から平和を考える」によせて◆近年の動向を振り返る

ボランティア  東村 岳史





 私が沖縄の特別展に関わるようになって数年がたちます。当初は第二次大戦末期の凄惨な地上戦の経験がどのように記録・継承されてきたか、沖縄の日本「復帰」前後の歩みと合わせて紹介する、といったように沖縄での出来事を中心に展示を構成してきたように思います。それが徐々に軸足を「本土」側に移し、日本の軍備増強の進捗をお伝えすることに比重を置かざるをえなくなってきました。
 今回紹介している軍事態勢や自衛隊と米軍の共同軍事演習などに関する情報は、私を含め多くの人にとってはおそらく馴染みのないもので、「軍事オタク」でもなければ普段は読み飛ばしてしまうかもしれません。しかし、無関心では済まされないところまで事態は進んでいるようです。

 日本政府はその布石を以前から準備しており、近年の動向に絞っていえば、2015年に成立した安保法制(安全保障関連法)以降、一貫した流れであるといえます。
 安保法制に関しては立憲主義に反し憲法違反であるという批判が多くの研究者や法曹関係者から上がり、反対運動も一時期大きな盛り上がりを見せたものの、制定後は沈静化し、既成事実化された状態です。その後、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナやイランに対する攻撃などにより、「台湾有事」を脅威と感じる有権者も多いことでしょう。
 ただ、近年の「危機」にのみ目を奪われ、日本が戦後どのような道をたどって現在に至ったのか、自省する機運が弱まっているようにも感じます。

 ごく最近の一例だけをあげると、自民党の西田昌司参院議員が「ひめゆりの塔」の展示について、「歴史の書き換えだ」と発言し、関係者を含む多くの人からの批判を浴びたことは、記憶に新しいでしょう。後に一部撤回したものの、彼はその後も某月刊誌に自分の主張を正当化する一文を寄稿しており、本当の意味では反省していません。西田氏のように自分の思い込みのみに基づいた発言は「ファクト・チェック」にはとても耐えられない代物ですが、しばしばいわれるように、特にSNS時代ではデマの方が事実よりも拡散しやすい傾向があります。
 ピースあいちの展示は、このような人目を引く発言に比べれば目立たなく、地味な内容で、影響力も限られるのはたしかです。それでも、確かな情報を擦り合わせ、限られたスペースに圧縮された内容を紹介していくことが自分たちにできるささやかなことであると考え、沖縄展を継続してきました。みなさまのご来館をお待ちしております。