はじまるよ! ピースあいちの国際化 From March 2024
ボランティア  高橋 よしの






 

 ピースあいちの常設展は来年3月から、パネルの説明(キャプション)が英語でも読めるようになります。館内Wi-Fi環境を利用して、来館者が手持ちのスマートフォンやタブレットで読めるのです。
 昨年の10月から1年かけて英語翻訳をし、常設展示のバイリンガル化にたどり着きました。かかわったのはピースあいちのボランティアの方や高校生も含めて16名。私もその一人です。

合言葉は、「よりわかりやすく&より正確に」。そこで、たとえば「兵役」とは何か、「兵役法」とは何かなど、勉強しながら翻訳をしていきました。

 最近はAIの進歩がめざましく、このプロジェクトにも活用しました。便利なGoogle翻訳やDeepL翻訳ですが、古語など難しい日本語表現を理解できないのか…すっ飛ばしたり、2回くりかえしたり、オヤオヤ…。AIの翻訳のままではとても使えません。英文のチェックをし、問題になった箇所の改善点を月一回の会議で話し合いました。それが、第一段階。
 次は、戦時中特有の言葉の適切な翻訳を、西形久司さんにチェックしてもらい、それを受けて再度英文を書き直しました。それが、第二段階。
 第三段階は英文をnative speakerの方にチェックしてもらいます。

 英語翻訳は「よりわかりやすく」「より正確に」を合言葉にすすめてきました。
 例えば、一つ目。
 *集団学童疎開は“evacuation of schoolchildren”と翻訳できますが、学童疎開の実態は「政策の趣旨からして避難というよりは『足手まとい』に対する厄介払いにほかならなかった。」との指摘もあり、戦争中学童が都会から追い出されるという意味合いはどうしたものかと考え、“集団生活を送ることになりました”を「were forced(強いられた)」と表現しました。
Approximately 400,000 children left their parents' homes and places where they were accustomed to live, and were forced to live in groups at inns and temples at each school.
(40万人の子どもが家元を離れ、住み慣れた土地を離れて、学校ごとに旅館や寺院などで集団生活を送ることになりました。) (第2展示パネル説明)

 次は、キャプションから。
 *模擬原爆パンプキン“Mock A-bomb pumpkin”に説明を加えました。
“Simulated A-bomb for drop training named Pumpkin” 投下訓練用の模擬原爆。
爆弾の形体の説明だけでなく、訓練用として投下された事実も読み取れます。1万ポンドの模擬原爆(ファットマンと同型・同重量)が全国に49発、愛知県内では7月26日名古屋市八事(1発、投下はB29エノラゲイ)、8月14日は春日井(4発)・豊田(3発)に投下されました。

 

 常設展は4つのテーマがあります。
 Ⅰ軍需工場がたくさんあったため攻撃の対象となった愛知県、名古屋市の空襲と証言
 Ⅱなぜアジア・太平洋―15年戦争がはじまったのか、その全体像と加害の歴史も含めた展示
 Ⅲ戦時下の暮らし
 Ⅳ第二次世界大戦以降の国際平和と現代の課題
という地域性と国際性を併せ持つ常設展を、さまざまな国や地域の方々にも見て、理解してもらい、一緒に平和について考えたいと思います。

 この翻訳作業を通して感じたことは、常設展が地域性と国際性を併せ持つ発信力のある展示だということ。調査に基づいた事実と体験者の証言の確かさが胸を打ちます。今もウクライナ、ガザなど爆撃にさらされている多くの子どもたち、人々がいます。そのむごさ、戦争の愚かさを、この展示も伝えています。地域や国をこえ多くの方に戦争と平和について考える手掛かりにしてほしいと願います。
 ピースあいちにはこの地域在住の方であっても、外国の方々がそんなに来られているわけではありません。でもバイリンガルが始まったことが、地域・国を越えて人々が集い平和について考えるよりどころとしてのピースあいちの再スタートにしたいと思います。多くの方がネットも含めアクセスしやすいように、これからも工夫をしていく必要を感じています。

 最後に、2企画を紹介します。12月9日(13:30~15:00)第一回交流会と3月9日(13:30~15:00)の無料体験交流会です。ご希望の方は申し込んでください。時間がない方は、英語のキャプションだけでも読むと、今までとは違ったコンパクトな説明の「常設展」体験ができます。