第11回寄贈品展―戦争が遺したモノたちー◆開催に寄せて
ボランティア(資料班)  橋爪 玲子




                                           
 

 11回目を迎える寄贈品展が、12月5日(火)から開催されます。今回は、2022年6月から2023年6月までに寄贈された資料を中心に263点を寄贈者別に展示公開します。
 アジア・太平洋戦争の終結から78年の年月が経ちました。戦争体験者の高齢化が進み、戦争の記憶の風化が懸念されています。年々、戦争資料が散逸していくなかで、新たに34名の方々から貴重な資料が寄せられました。

展覧会場の様子1展覧会場の様子2

うちわ 愛国婦人会愛知県支部(左)と 婦人之友六月七月合併号(1945年発行)(右)

 ブリキの衣装缶に収納されていた旧陸軍軍服をはじめ軍装品、愛国婦人会作製のうちわ、「婦人之友」、陶製のアイロンなど多くの実物資料は遺品の中から見つかったものです。寄贈品全体のおよそ三分の一になります。
 骨董市や古書店などで収集した資料もあります。なかでも、1934年から1942年に刊行された月刊誌「世界画報」は、まとめて寄贈されました。写真を中心とした誌面からは、当時の状況を月単位で追うことができます。

漫画集「土の戦士 満蒙開拓青少年義勇軍 内原版・満州版」

 また、「戦争の記憶を記録として後世に残しておきたい」という思いから、戦争体験を書かれた手記なども数点あり、実物資料と合わせて展示しています。8月15日付の中日新聞に掲載後、当館にも多く問い合わせをいただいた漫画集 「土の戦士 満蒙開拓青少年義勇軍 内原(うちはら)版・満州版」も展示します。
 作者の細井芳男さん(故人)は、晩年になって半世紀以上前の記憶を辿り、1939年に満15歳で義勇軍に入隊した体験を漫画に描き冊子にしました。全国から集められた青少年の訓練所の共同生活の様子や当時の服装や住居などが詳細に描かれています。

 今回は、海外からの寄贈品として、「1945年6月15日付連合軍による名古屋地区地勢調査書No.134」の一部も展示します。「NPO法人キセキ遺留品返還プロジェクト」代表のジャガード千津子さんが、来日の折に来館され寄贈していただきました。沿岸地図(MAP8)など、名古屋地区が詳細に調査されていたことがわかる貴重な資料です。

 私たちは、寄贈品を通じて戦時下の市民の暮らしや軍隊生活など、その時代を生きた人々の様子を知ることができます。
 「戦争が遺したモノたち」が、私たちに伝えたかった思いを感じ取っていただけたらと思います。本展が、あらためて平和の大切さを考える機会となることを願っています。