愛知サマーセミナー◆20歳の私が語り継ぐ満蒙開拓の真実
ボランティア・語り継ぎ手の会 近藤世津子






 「梅雨が明けた!?」と思わせるような青空の下、名古屋の気温は37.4℃を記録。そんな猛暑の中「第34回 愛知サマーセミナー2023」が開催されました。今年の日程は7月15~17日の3日間、三か所の会場で行われ、ピースあいちは、名古屋大谷高校の会場で、17日に講座を開催しました。

 ピースあいちは、例年サマーセミナーで講座を開催しますが、今回は、「20歳の私が語り継ぐ満蒙開拓の真実」と銘打ち、今年20歳を迎えた大橋麻由さんが、語り継ぎを行いました。ピースあいち戦後75年プロジェクトをきっかけに語り継ぎ活動に参加された大橋さんは、今回がデビューです。時間をかけてしっかりと準備を整え、今日の本番を迎えました。


 三か所の会場での同時開催であり、数多くの講座がある中、どれくらいの方が聴講してくれるのか、少し心配をしていましたが、30人ほどの方が会場へ足を運んでくださいました。大橋さんと同世代の若い方も数多く参加してくださり、嬉しい限りです。また、語り継ぎ手の会「リボン」のメンバーも駆けつけて、大橋さんにエールを送ります。


 太平洋戦争の最中、国策として推し進められた「満蒙開拓」ですが、その陰に見えない多くの悲劇がありました。
 大橋さんは、満蒙開拓によって過酷な人生を送ることとなった、岩見鈴子さんの半生を取り上げました。一家で希望を抱いて満州へ渡りましたが、終戦、ソ連の侵攻によって、岩見さんの人生は一変します。決死の逃避行で命は失わずにすんだものの、願い続けた日本への帰国は30年間かなうことはありませんでした。

 岩見さんのたどった人生を、イラスト、写真、地図を用いながら、大橋さんは、静かに語り続けます。家族との別れ、中国での辛い生活、そして帰国がかなっても、なお受ける差別的な仕打ち。あまりに厳しい現実に、聴講者も静まり返り、聞き入っていました。
 講座では、大橋さんが語り継ぎをするにあたって、長い間サポートを行ってきた平田和香さん(「満蒙開拓」の語り継ぎ手)もお話をされ、「満蒙開拓の悲劇、これを無かったことにはできません」という強い思いを語りました。

 「満蒙開拓」という難しいテーマに果敢に挑戦し、初めての実演を見事にやり切った大橋さんに、会場からは温かい拍手が送られました。聴講者からは「語り継ぎを続けることが大事」「もっと戦争体験を聴きたい」という感想が寄せられ、新たな「20歳の語り継ぎ手」が誕生した一日となりました。