「沖縄から平和を考える――南西諸島要塞化の現状」
ボランティア  東村 岳史






 ピースあいちは昨年、沖縄の日本復帰50年を振り返る展示を行いました。その中の重要なテーマの一つは、在沖縄米軍基地問題ですが、今年はそれに加えて、これまで取り上げてこなかった自衛隊の動向を展示することにしました。
 背景にあるのは、国際情勢と日本政府の対応、マスコミを含めた世論の変化です。

 ロシアのウクライナ侵攻後、日本も防衛力を増強すべきという意見が一定の支持を集めているようです。それを「追い風」に、岸田内閣は2022年12月に安保三文書を閣議決定、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保持を明記しました。
 しかしながら国会での議論も経ずに打ち出された閣議決定については批判も多く、今後の展開は予断を許さないでしょう。

 ただ、注意しておかなければならないのは、一見突然打ち出されたかのようにも映る防衛政策は、それ以前から計画されていたものであるということです。
 それをよく示しているのが、南西諸島(九州島南部から南西方向に台湾の東部近海まで連なる島嶼群の総称)における自衛隊の段階的増強です。中でも与那国島、宮古島、石垣島への新部隊の配備は、いわゆる「台湾有事」にこれらの島々の住民が巻き込まれるのではないかという不安を生じさせています。

 第二次大戦末期の凄惨な地上戦を体験した沖縄では、軍隊は住民を守らないという教訓が記憶されていることもあり、自衛隊増強の動向に懸念を示す意見が根強くあります。
 対して、「本土」側は、マスコミ報道を含め、沖縄ほどの切迫感を持ってこの問題を考えていないのが現状でしょう。米軍基地問題と同様に、沖縄に負担を押し付ける構造です。


 スペースの都合上、限定的な内容しかお伝えできないのは歯がゆいのですが、沖縄と「本土」の「温度差」をいくばくかでも解消する試みとして、ささやかな情報提供を試みたのが今回増設したパネルです。
 南西諸島要塞化に反対する取り組みとして「島じまスタンディングプラカード」というキャンペーンも紹介しています。


 また、2階のプチギャラリーでは、阪井芳貴氏(名古屋市立大学名誉教授・沖縄県美ら島沖縄大使)が撮影した「沖縄の戦争遺跡」写真20枚も展示しています。みなさまのご来館をお待ちしております。