◆第10回寄贈品展一つなげていこう平和への願い一開催に寄せて
ボランティア(資料班)  橋爪 玲子



                                           
 

 第10回寄贈品展「つなげていこう平和への願い」が、12月6日から開催されます。
 ピースあいちは開館以来、市民の皆さまから戦争と平和にかかわる資料のご寄贈をいただいています。今回は、2021年8月から2022年6月までに寄贈された資料を中心に367点を展示公開します。
 アジア・太平洋戦争終結から77年の年月が過ぎました。戦争体験者は高齢化し、その記憶の風化を懸念する声が聞かれます。残された資料は、戦争体験者と次世代をつなぐ大切な役割を担っています。
 寄贈品展では、新たに寄贈された26名の寄贈者別に、エピソードや資料説明を添えて展示し、目録も作成されます。寄贈者の方々の思いが伝わる資料を会場でじっくり見ていただき、平和への願いにつなげてほしいと思います。

展覧会場の様子1展覧会場の様子2

日満親善の名のもと、満洲での開教及び軍隊慰問のために派遣された僧侶たちと任命状

 

 今回、寄贈品展は10回目を迎えます。日章旗寄せ書きをはじめ、軍事郵便や写真、雑誌や手記などは、ほぼ毎回展示される資料です。引揚証明書もそのひとつで、昨年はシベリアとモンゴルの抑留者のもの、今回は、満洲(現:中国東北部)からの引揚者のものです。
 寄贈者の後藤敏子さんは、日満親善のため満洲開教使に任命された父親の後藤智研さん(当時、東春日井郡勝川町の新光寺住職)と、1933(昭和8)年に満洲へ渡り終戦を迎えました。智研さんは、帰国を前に1946(昭和21)年、満洲で発疹チフスのため亡くなり、敏子さんがひとりで帰国した際の引揚証明書です。

展覧会場の様子1

引揚証明書

 この引揚証明書は、退去証明書と重ねて父親の遺品とともに長年大切に保管されていました。今回展示される満洲開教使の任命状、それを伝える新聞記事、「満洲特派布教師」と印刷された名刺などは、満洲における布教活動の資料として大変貴重なものです。

 2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻があり、戦時下の悲惨な状況を目にしました。国境を超えて避難する女性や子どもの姿に我が子を重ね、無事を祈った方も多いと思います。私は、昨年の寄贈品展オープニングイベントで語られた朝鮮半島からの引揚者の体験談が思い出されました。
 第10回寄贈品展が、新たな戦争の記憶に加わり、平和の大切さを未来に伝えることを願っています。