第9回寄贈品展-資料班の視点から-
ボランティア(資料班)  橋爪 玲子

                                           
 

 企画展や常設展の会場で、展示された資料(寄贈品)を慈しむように見入る姿に出会うことがあります。同じ時代を共有した者としての悲しみに思いを寄せた時、忘れかけていた戦争の記憶が呼び起こされたのかもしれません。また、ノート片手に真剣な面持ちで展示品を見つめながら鉛筆を走らせる中学生の姿も見かけます。戦争体験者は、現在80代~90代の高齢となり、この中学生の曾祖父母にあたります。
 直接戦争体験を聞く機会が少なくなっている今、寄贈された戦争資料は、戦争体験者と戦争を知らない世代とをつなぐ懸け橋的な役割を担っています。今回の寄贈品展は2020年6月から2021年7月にご寄贈いただいた115点を展示します。あらゆる世代に寄贈品展を見ていただき、新たな戦争の記憶に加えていただけたらと思います。 

展覧会場の様子1

寄贈品展の準備をする資料班

 

 毎年開催される寄贈品展は、資料班にとっても、その年の集大成です。資料班の通常業務は、寄贈品の受付、登録、保管等の地道な作業で、いわば「縁の下の力持ち」ですが、資料班の視点から見えてくることもあります。
 戦争体験者の高齢化とともに、寄贈者も本人から配偶者や子ども、そして孫へと推移しています。今回26名の寄贈者のうち、子どもが13名と半数を占め、本人4名、妻2名、孫2名、その他(親類等)となります。
 このことは、実際に聞き取り調査の場で、寄贈された資料の情報、エピソードの量にスライドされます。個別に見ると、情報量の多いものと、曖昧や不明なものとの間に大きな差が生じています。断捨離や遺品整理で偶然見つかった場合など、寄贈者からは「もっと戦争の話を聞いておけばよかった…」と悔やまれる声を聞きます。

 

 第9回寄贈品展は、寄贈された資料115点を寄贈者別に展示公開します。日章旗寄せ書きをはじめ、出征兵士を見送る時に使用した日の丸小旗、軍用柳行李に保管された衛生兵の白衣や未使用の医薬品、羊皮が使われた陸軍の寒冷地用外套、名古屋市立第三高等女学校(現旭丘高校)の女学生が綴った12冊の日記等、当時の様子が伝わる貴重な資料です。
 今回、引揚証明書は、3点ありました。モンゴルのフフホト市の厚包貿易公社の社員(民間人)、極寒の地で強制労働を強いられたシベリア抑留者とモンゴル抑留者(軍人)で、三者三様の生きた証です。また、遺書も複数あり、出征前に遺髪と共に両親に残したもの、軍艦千歳から愛する妻と子どもたちへ宛てたもの、外地からの軍事郵便はがきとその内容も形態も異なります。

 

 寄贈品の一点一点が、唯一無二なものであることを改めて気付かされます。
 12月7日からはじまる「第9回寄贈品展ー来て見て伝えよう戦争の記憶ー」。 皆さまのご来館を心よりお待ちしています。