2021ピースあいち子ども企画展―斎藤さんの思いを引き継いで―
ボランティア  丸山 泰子

                                           
 

 2011年の夏スタートした子どもたちのための展示は、今年で10年になります。展示内容の基礎を築いて下さったのは、昨年亡くなられたピースあいちのボランティア・語り手の斎藤孝さん(初代子ども展代表)でした。斎藤さんの子ども展に対する強い思いを、これからも大切に引き継いでいきたいと思います。

 1931年9月18日、日本は中国東北部で「満州事変」を起こし、約15年にわたる戦争を始めてから、今年で90年になります。斎藤さんは、1930年生まれでした。
 戦時下の子どもたちは軍国教育を受けて、戦争に協力させられました。20枚のパネルとピースあいちが所蔵する実物を通して、当時の子どもたちの暮らしを振り返ります。
 「遊び」や「戦時の替え歌」のパネルは、斎藤さんがこだわられたテーマです。戦時下であっても遊びを工夫したり、替え歌を作ったりして、たくましく、シニカルに生きた子どもたちの姿があったことを知ってほしいと願っておられました。漫画『のらくろ』や『冒険ダン吉』は、斎藤さんが子ども展のために、古書店で手に入れて下さったものです。自由に手に取っていただけますので、是非ご覧になって下さい。

展覧会場の様子1

 

 さて、今年の子ども展の特別展示は、敗戦後海外に残され、「引き揚げてきた子どもたち」。お二人の証言をもとに、日本が起こした戦争について考えます。
 お一人は、敗戦時「京城公立第一高等女学校」(現在の韓国ソウル)1年生だった栗本伸子さん(1933年ソウル生まれ、88歳)、もうお一人は、「高千穂在満国民学校」(満州奉天、現在の中国東北部瀋陽)5年生だった松下哲子さん(1934年満州国生まれ、87歳)です。お二人とも日本の敗戦とともにそれまでの恵まれた生活がひっくりかえり、内地の子どもたちとは異なった体験をされました。そして、自分たちの恵まれた生活が、朝鮮や中国の人たちの犠牲の上に成り立っていたことを戦後ずっと考えながら今日まで生きてこられました。
 戦争の体験をじかに語れる人々は、本当に少なくなりました。お二人は歴史を学ぶことの大切さを教えて下さっています。戦争は『遠い昔のできごと』ではなく、今の日本、そして今の世界につながっていることが分かると思います。

 

 1階のフリースペースで常設展示している「戦争と動物たち」は、子ども展の期間中、3階展示室で実物資料とともに展示します。栗本さんの家に飼われていた犬は、戦時中、朝鮮でもどこかに連れていかれ、食料にされたかもしれないといいます。戦争によって二度と動物たちも犠牲になることのないよう願って、今年も子ども展を開催します。コロナ禍ではありますが、多くの皆様のご来館をお待ちしています。