初めての語り継ぎを終えて
語り継ぎボランティア  佐々木 陽子

                                           
 

展覧会場の様子1

 

 8月6日、ピースあいちの「夏の戦争体験を聴く」シリーズで、初めての語り継ぎをしました。去年10月から始まった語り継ぎ手ボランティアの研修会に参加して、7月に全9回が終了。
 その中で、これまで行われていた、かつて語りをされていた方の想いを受け継いで行う語り継ぎではなく、私の身近な人達の記憶を(直接想いをすでにきくことは叶わない中で)掘り起こして、私の視点でまとめた内容で、題も「私のヒロシマ」としたものでした。

 幼かった父の、ガラスが飛んでいった(爆心地から16キロ地点)、すぐ近くの田んぼに落下傘が落ちてきて爆弾かと思ったけれど違った、周りに水を引いてそれから撤去作業を軍人さんたちがした、という記憶。私が子どもの頃、父方の祖父(救護所になった国民学校の校長をしていた)のもとに原爆手帳が欲しいから証言してほしいと頼みに来ていた人たちがいたという記憶(原爆投下から何十年も経ってから取得しようとする人たちが多かった事実とその意味合い)。被爆後、外傷はなかったのにしばらくして職場で倒れてしまった母方の祖父のもとに疎開先から駆けつけ、最期の5日間看病した祖母の記録と私の祖母の記憶。
 私なりに戦争のもたらしたものについて考え、投げかけたつもりです。

 広島をはじめ各地で語り活動をされている、またはされていた強い意志を持った方々がたくさんいらっしゃいます。でもきっと、それよりずっとずっと多くの人たちが、祖母のように語ることなく亡くなられたのだと思うのです。
 そういうことに思いを馳せる語りがあってもいいのかなと考えました。

 終わった後のアンケートに13歳の女の子が、「大好きな人を戦争で、原爆でうばわれるのは、あってはいけないことだと思いました」と書いてくれていました。純粋で、それでいて核心をついた感想に、はっとさせられました。
 これからさらに改善を重ねて、より伝わる語り継ぎを目指したいと思います。


◇参加者の感想から◇

・語り継ぎの方のお話は初めてうかがいました。手帳の内容は、今までうかがったことのないような、身内の方のありのままの想いが伝わってきて、とてもよい機会となりました。貴重な経験となりました。

・戦争を実際に体験された方が残されたものを見せていただき、聞かせていただいたのは初めてでしたが、今の私たちからは想像がつかないほど残酷なものだったということがよく理解できました。当時の生の声から、どれだけ戦争の影響がひどいもので、どれだけの人が身体的にも精神的にも被害をうけたのかを教えていただきました。私にできることから平和を守っていく活動をしていきたいです。

・祖母様の文章もよかったし、読まれた佐々木陽子さんの口調もとてもよいトーンでした。感動しました。

・小・中学生の娘を連れてきました。中学生の娘は、来春修学旅行で広島を訪れる予定です。しかしコロナの猛威のなか、中止も考えられます。本来現地で学ぶことに優るものはないですが、このような時代を生きる子どもたちにとって、自分の生活のまわりで学ぶ機会を大切に、これから親としては考えていきたいと思います。