特色ある展示と素敵な仲間◆ピースあいちで学ぶこととは
名城大学経済学部教授 渋井 康弘

                                           
 
展覧会場の様子1

ガイダンスビデオを見て、まずはピースあいちの成り立ちから…

 2007年、大学時代の恩師の紹介で、ピースあいちのボランティア・スタッフである河原忠弘さんとお会いしました。新聞記事を読んで気になってはいたものの訪問することのなかったピースあいちを訪問し、それ以来ほぼ毎年、学生たちを見学に連れて行くようにしています。大勢で押しかけても、いつも丁寧にご対応いただき、心から感謝しています。

 戦争・平和を扱うミュージアムは他にもありますが、ピースあいちは以下の3点で際立った特徴を持っていると思います。

 

 第1点は、戦争にかかわる歴史的事実を、被害の側面も加害の側面も直視することで、過去から学ぼうという姿勢が前面に出ていること。見たくない歴史的事実に目を閉ざし、自国の歴史を美化する風潮が広まる中、ピースあいちの展示からは、事実を直視することによってこそ明るい未来を構築できるのだという信念が感じられます。

 

 第2点は、一般人・民衆の視点からの展示を重視していること。歴史を扱う展示は、どこのミュージアムでも著名な人物を取り上げ、半ば偉人伝のようなものになりがちです。しかしピースあいちには、著名な人物だけでなく、日々の暮らしを営んできた普通の人々、市井の人々の視点から作成された展示物が数多くあります。そうした人々の行動の結果が戦争への突入でもあったし、同時にそうした人々の平和への思いが、平和運動の基礎にもなってきたという事実。1階に展示されている年表には、こうした視点が特に色濃く表れています。

 そして第3点は、このミュージアムのほとんどが、様々な経歴を持つ、様々な年齢のボランティア・スタッフによって運営されているということ。歴史学や資料館運営の専門家もおられますが、ほとんどの方はそうではありません。
 しかしながらこの方々は、平和のために過去の事実を後世に伝えたいという思いでつながり、良い企画のために勉強し、意見を闘わせ、ハイ・レベルの研究成果を展示しながらミュージアムを管理・運営しています。大変なご苦労のはずですが、おそらく来館者たちの真剣な眼差しが、この方々の活動の原動力となっているのでしょう。このグループには、私が勤務する大学の学生も(語り継ぎボランティアの一員として)参加しています。教師としてうれしい限りです。

 私が毎年、ピースあいち見学に学生を連れて行くのは、そこにある特色ある展示を観てもらいたいからですが、それと共に、このボランティア・スタッフたちの素敵な人間関係を感じ取ってもらいたいからでもあります。