福島原発事故の今とこれから
河田 昌東(NPO法人チェルノブイリ救援・中部)

                                           
 
展覧会場の様子1

「福島を忘れない 原発事故から9年―ピースあいちスタッフによる写真レポート」  協力:NPO法人チェルノブイリ救援・中部

 福島第一原発事故から早くも9年が経った。1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故と並ぶ史上最悪の原発事故である。しかも3基同時の爆発とメルトダウン・メルトスルーは過去にも例がない。国と東電は廃炉に向け作業を行っているが、全てが初めての事で思うように進まない。
 最も困難を伴うのが溶けた炉心燃料(デブリ)の取り出しと汚染水の処理である。デブリの量は1号~3号合わせて原子炉内に溜まったものが231トン、炉外に溶け出たものが637トン、合わせて868トンと推定されている。何れも強烈な放射線の中での仕事であり、勿論、ロボットでしか作業できない。そのロボットの開発もこれからである。ロボットを動かすIC回路も放射能で壊れるのはチェルノブイリで経験済みである。東電は廃炉まで40年とみているがその保証はない。

 溶けた炉心を今も毎日150トンの水で冷やし続けている。それは放射能汚染水として処理しなければならないが、放射性セシウムなどの重金属は回収出来ても、水素の仲間であるトリチウム水は処理できず、全てタンクに貯めている。その量は120万トン、現在も毎日200トンずつ増えている。汚染水タンクの設置場所が限界に近づいており、原子力規制員会は海洋放出の方針だ。これには漁協はじめ福島県の地元が猛反対している。

 事故から9年経ち、やっと収穫出来る魚種も事故前と同じになった今、再びトリチウムの放出が行われれば甚大な被害が出ることは想像に難くない。多くの専門家はじめ国や東電はトリチウムのエネルギーが小さく、体外にすぐ出るので影響がない、と主張するがこれは間違いである。トリチウムは水素の代わりにDNAに取り込まれ、遺伝子を壊す。風評ではなく実害が起こるのだ。
 事故はまだまだ終わらない。