◆「Peace nine 2019 展」によせて
Peace nine実行委員会 西村 正幸

                                           
 
絵はがき

 恒例の「Peace nine 展」を今年もピースあいちにて開催させていただきます。
 わざと『恒例の』と形容詞をつけることで違和感を感じています。
 というのも、世界から『本当に』紛争や戦争がなくなり、『本当に』平和な世界が来ればいいのにと願って「Peace nine 展」を開催しているからです。
 でもみんな、“本当に戦争がなくなって、平和な世界が訪れることなんてありっこない”と心の底で思っているのではないでしょうか。
 でも、第一次世界大戦で息子のペーターを、第二次世界大戦では孫のペーターを戦地で失ったドイツの版画家であり彫刻家のケーテ・コルヴィッツは、あまりにも辛く悲しい体験の果てに、亡くなる寸前まで孫娘に、『本当に平和が訪れる新しい考え方』をする時代が来ることを信じていると話し、ドイツが敗戦を迎える直前に天に召されます。
 残念ながら、世界は異なる人たちの間を分断させる思想を持った指導者によって、平和から程遠い位置まで逆戻りしています。 鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリー「ヒバクシャ」の中だったでしょうか、劣化ウラン弾の犠牲となった少女が「私を忘れないで」と話すシーンがありました。
 人は辛い出来事、嫌な出来事は忘れようとするようです。 あの少女は、人のそういう特質をわかってあのような言葉を残したんですね。 戦後74年が経ち、日本では今やあの戦争の悲惨な中を生き残った方々が少なくなり、戦争を知らない世代が『忘れてはならない戦争の悲惨』を語り継いでいかなくてはなりません。
 私たちアートに携わる者は、表現する術を持っています。
 「Peace nine 展」の出品者は、自ら参加を決意したアーティストたちです。
 私を含む彼らは、偽りの平和のなかで暮らすより、未だ失われて目の前に見えない「本当の平和」を捜し可視化するために、匿名ではなく自分自身をさらけ出して表現しているに違いない、これがアーティストの語り継ぐ手段なのだ、と思って見ていただければ幸いです。
 2019年8月15日敗戦記念日に、スウェーデンのマルメの版画工房にて