2019年度沖縄企画展「沖縄戦と子どもたち」の見どころ
阪井芳貴(名古屋市立大学教員・美ら島沖縄大使・ピースあいち理事)            

                                           
 
展覧会場の様子1

 本日5月21日から、2019年度の沖縄展が始まりました。今回のテーマは「沖縄戦と子どもたち」です。
 ピースあいちでは、開館一周年記念特別展「沖縄から戦争と平和を考える」以来、10年にわたって、6月23日の沖縄慰霊の日をはさむ約2か月間、沖縄関係の企画展を開催してまいりました。この間、沖縄戦の全貌を知り、また今の沖縄をめぐる課題に触れ、さらに焦点をかなり絞った展示も企画してきました。
 毎回のことですが、企画に携わったスタッフ全員の真摯な学びと深い想いにより、他所には真似できないピースあいちならではの沖縄へのアプローチが表現されてきました。その取り組みの姿勢や展示の内容には、美ら島沖縄大使を沖縄県からおおせつかっている立場として、いつもいつも心から感謝しております。

 さて、今年の「沖縄戦と子どもたち」の展示内容について少しご紹介しましょう。
 これまでにもピースあいちでは「ひめゆり学徒隊」や「学童疎開船対馬丸」の悲劇に特化した企画展、あるいは「愛楽園 ハンセン病」や「教科書検定問題」などを取り上げた展示において、沖縄戦における子どもたちの置かれた状況などについても目を配ってきました。ですから、このテーマに決めた当初は、これまで展示してきたパネルを再利用したりすることで、たやすく展示は完成するのではないか、と思われていました。
 ところが、過去の展示のデータを確認すると、修正しなければならないこと、新たに学んで深められた知識や情報、そして全く把握していなかったことがらがたくさんあることに気づかされました。その結果、全面的に新たに原稿を書き起こし、資料を盛り込んだ、これまでにない展示になったのです。

 全41枚のパネルが、3部構成で展示されています。
 第1部は「沖縄戦前夜の子どもたち」です。戦前の教育や、日本軍の沖縄駐留とともに軍に取り込まれていく子どもたちの生活、あるいは学童疎開などを取り上げています。その中で特筆すべきは、沖縄本島北部で編成された「護郷隊」の実態についてです。ぜひこの解説には注目していただきたいと思います。
 第2部は「沖縄戦のなかの子どもたち」です。戦場における子どもたちのさまざまな体験を、証言をもとに記述しています。この第2部では、一口に沖縄戦と言っても、時期と場所、年齢や立場により、子どもたちの置かれた境遇や体験がさまざまであることと、また、さまざまであってもすべての子どもたちの運命が理不尽に翻弄されてきたことに違いはないことが伝わってきます。
 第3部は「沖縄戦後の子どもたち」。戦争の終結後も、子どもたちに直ちに平安がもたらされたわけではないことが明確になります。パネルの最後には、昨年の慰霊の日に「沖縄全戦没者追悼式」で朗読され大きな反響を呼んだ詩の全文が提示されています。詩の作者の想いをぜひ受け止めてください。



展覧会場の様子1

米軍テントシートUSEDで作った女児服と
砲弾で作った菓子器(那覇市歴史博物館提供)

 

 パネル展示のほかに、那覇市歴史博物館からお借りした戦後の復興時期の貴重な資料と、南風原文化センターからピースあいちに寄贈された沖縄戦当時の資料も展示されています。さらには、映像資料と参考図書もご覧いただけます。
 どうか、ある程度時間に余裕をもってお越しいただき、じっくりと展示をご覧いただきたいと思います。また、ご覧いただいたあとに、ご感想などお聞かせいただけたら幸いに存じます。