◆「朗読と歌の夕べ」に参加してー知ること、伝えることー
緑風の会  黒川 公美子            

                                           
 

 2001年9月11日 私たち家族は夫の仕事でシンガポールに居りました。
 テレビに映し出された信じられない光景。「これ何?映画?」当時7歳だった娘が聞いてきました。急いでNHKの衛星放送にチャンネルを変えましたがまだ何も伝えていません。仕方なくチャンネルを戻すと、ただならぬ様子でキャスターが「エアークラッシュ」(飛行機事故)だと伝えています。しかしそれは次第に「アタック」(攻撃)という言葉に変わっていきました。
 2日ほどたってから日本人学校、各企業、日本人会などから渡航を控えるように、またアメリカ大使館などには極力近寄らないことなどの注意喚起が伝えられました。現地のテレビ番組が、今まで肩の後ろに背負っていた拳銃を、体の前で両手で構えての警備となったアメリカ大使館を映していました。
 イスラム教徒のインドネシア人の知人は仕事のキャンセルがあったと肩を落としていました。
 もし今、戦争が始まったら……。

絵はがき

朗読を終えた黒川さんたち

 今はテレビ・ラジオ・SNSなど瞬時にいくらでも情報を得ることができます。戦時中の日本で、正しい情報を得られていれば救われたであろう命がたくさんあったでしょう。先人たちが混乱の中どのような体験をして生きてこられたのか。知ることが大切であると改めて実感しながら、今年も朗読に参加させていただきました。
 経験のない私達は語り部にはなれませんし、語り部の方々のように体験されたことを自身の言葉で伝える事はできませんし、情報社会の今「朗読」というアナログで微力な活動ではありますが、語りつないでいくことはとても大切なことだと信じています。
 戦争は戦地だけではなく、沖縄だけではなく、今私たちが生活しているこの地でも起きていたということを、あなたのおじいちゃんやおばあちゃんの時代にね…、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんの時代にね…、というように、苦しく悲しい経験をされた方々が残された言葉を知り、語りつないでいくことが、平和であることの意味や命の大切さをほんの少しだけでも考えるきっかけになればと思っています。

 ピースあいちの皆様、朗読を聞いてくださった皆様、ありがとうございました。