始まりました!
特別企画  丸木位里・丸木俊「原爆の図」と市民が描いた「原爆の絵」展      
運営委員 赤澤 ゆかり



加藤さんと堀田さん

「原爆の図」展

 

 今年も、丸木美術館からピースあいちへ、「原爆の図」がやってきました。丸木位里・丸木俊は終戦から5年後の1950年から約30年かけて15点の連作を描きましたが、今回展示されているのは、その第一作目である「幽霊」です。
 丸木夫妻は、当初から「原爆の図」を連作にするつもりはありませんでした。大画面で誰が見てもわかるように、原爆によって被害を受けた人間の姿だけを描きました。そこに背景はありません。「これが原爆だ」と、原爆のイメージが注ぎ込まれています。
 「幽霊」は、続いて描かれた「火」「水」とともに、その後、日本全国を巡回して展覧会が開かれました。まだ連合軍の統治下で厳しい検閲があった時代でした。丸木夫妻が、「原爆を初めて伝えた画家」と評される理由でもあります。

加藤さんと堀田さん

 

 また今回は、「原爆の図」のために描かれたデッサンも8点展示しています。
 戦後、丸木夫妻のアトリエには若い画家志望の人たちがたくさん来て、デッサン会をしていました。そこには、後に絵本画家となる「いわさきちひろ(岩崎知弘)」の姿もありました。(夏にはピースあいちで「いわさきちひろ展」を開催します。そちらもお楽しみに!)
 そうした人物デッサンが、原爆の図を描くという目標を持つことで、どのように変わっていったか。二人の決意と気迫を感じていただけることでしょう。
 ちなみに、初期3部作のうち「火」と「水」は現在、ドイツ・ミュンヘンの美術館で展示されているそうです。「時代の動きの中で、丸木夫妻の『原爆の図』は新たな評価がされつつある」と、丸木美術館学芸員の岡村幸宣さんは言われます。

加藤さんと堀田さん

市民が描いた「原爆の絵」展

 

 さらに今回は、広島の市民が描いた「原爆の絵・ヒロシマを語り継ぐ」から26枚の絵を同時展示しました。直接の原爆の体験者でない丸木夫妻が、体験者の多くの記憶を集めて原爆のイメージを立ち上げたのに対し、こちらは、原爆を実際に体験した一市民の記憶。いつ、どこで体験したのかがわかる絵です。
 そこでピースあいちの担当スタッフたちは、実際にその人が原爆を見た場所を捜し、その場に立ってみました。すると、「いろいろな意味で、過去の出来事が現在とつながった」と言います。その後、スタッフは広島に通い、25か所の場所を特定しました。今回、広島の市民が描いた絵とともに、スタッフが撮影したその場所の写真も展示しています。
 ピースあいち10周年記念特別展 丸木位里・丸木俊「原爆の図」と市民が描いた「原爆の絵」展は、3月25日(土)まで。ぜひ、たくさんの方に観に来ていただきたいと思います。