◆ ボランティア雑感◆京都での三婆読書会合宿 
ボランティア 井戸 早苗            

    

絵はがき

異国の旅

 京都で二か月に一度一泊二日の、たまっている思いを存分に語る大切な場を、6年間も持ち続けている。継続できたのは、京都御所脇の共済施設が一年前から予約を取れるため、安定した場所が確保できることと、必ず読みたい本を決め、次回に話を深めるようにしてきたことだ。
 今年の9月で、127冊目となった。年齢を重ねると、なかなか自分の悩みを語り出せない。不安で寂しく、夫は他界し、子供は独り立ち。同じ世代を生きた者が理解し合える場が大切となってくる、平常心を持ち続けるためにも。

 三婆は現役時代、元気に父母、生徒、教師の三者で学校教育を創ろうと、三者合宿、父母懇、サマーセミナーの開設と先頭をきって走ってきた。それだけに現場での風当りも強く、忙しい時間の中で、職場、家庭、子育ての悩みも深く、何でも相談してきた仲間だ。京都に移住した婆は、夫の介護の疲れから脳内出血で半身不随となり、誰も知り合いのいないところで息子夫婦のお世話になっている。残る二婆が名古屋から駆けつけているのだ。
 京都の婆は、私達二婆が社会の窓と言ってくれる。三婆とも解放感に浸る一時だ。こんな深い人間関係ができたのも、本を読み合い、互いに新発見をし、素直に自他の存在を認めあえるからであり、噂話や愚痴で終わることがなかったからだ。
 定年後の60歳から70歳までは、一か月に一度、三人の家を持ち回り(夕食、アルコール付き)、疲れると旅に出た。60代は小説が多かったが、最近は憲法や社会問題をとりあげた本が多い。9月に読んだ「貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち」では、知らないことの恐ろしさを感じた。老人必読の書である。
 最後に、ピースあいちのボランティアになって出会った人々と、また新しい人間関係が生まれている。それが元気を生み出すパワーになっていることも付け加えておきたい。

  ◆これまでの読書会で取り上げた本の一部  

絵はがき

語らい

   「中流の復興」小田実
   「百歳の提言」むのたけじ
   「貧困大国アメリカ」堤未果
   「日本辺境論」内田樹
   「若き人たちへ」筑紫哲也
    「差別と日本人」野中広務
   「私にとっての20世紀」加藤周一
   「朝鮮と日本に生きる」金時鐘
   「自分の木の下で」大江健三郎