資料ナンバー1599 「主婦之友付録 夏の飲物と冷菓子の作方100種」の話 資料班

 もうすぐ9月だというのに。冷たいお菓子と飲み物の本です。
 「主婦之(の)友」という雑誌の昭和14年7月号の付録です。昭和14年というと、1939年。71年前の夏には、どんなおやつがあったのでしょうか。

 もくじを見て、まず意外に思ったのは、かたかなの多さ。こんな感じ。

○苺汁(いちごジュース)のスポンジゼリー○バナナバヾロア○コヽアブラマンジ○パイナップルプディング○キャラメル羹(かん)○フルーツポンチ○コーヒーアイスクリーム○バナナサイダー○クリームネックター○グレープジュース○スヰートジンジャー○チョコレートソーダ水

バヾロア(ババロア)とかコヽア(ココア)とかスヰート(スイート?スウィート?)とか、昔っぽい表記もあるのですが、大体は21世紀の今でも違和感のない書き方が使われています。婦人雑誌の付録ですから、誰でも知っているものだけでなく、新しいお菓子を紹介する、という面もあったのかもしれませんが。71年前のおやつ、なかなかハイカラです。

 ちょっと待った、という気持ちになられた方もいらっしゃると思います。バナナサイダーって、チョコレートソーダって、スポンジゼリーって、何なのか。作り方を見てみましょう。

バナナサイダー。バナナをつぶして、(ていねいにするなら裏ごしをします。)コップに入れ、サイダーを注ぐ。手早く混ぜて一息に飲む。(ほんとにそう書いてあるの。)
チョコレートソーダ水。ココアか刻んだ板チョコに砂糖を加え水で練ったものに水を足して煮溶かして、冷まして、ソーダで割る。
スポンジゼリーは、ゼリー(ゼラチン使用)を作るとき、固まりかけたら泡立て器で混ぜ続けて気泡の入ったゼリーにする。
クリームネックターは、乳製品のクリームではなく、酒石酸(クエン酸やリンゴ酸の仲間)と砂糖で作ったシロップを水で割ったものです。

 かたかな満載のお菓子を作ってるのに、作り方を説明する文のほうは、旧仮名遣いです。「ゆつくりしてゐては固まつてしまふ虞(おそ)れがあります。」こんな感じです。「パイナップルプディング」だと「ツ」とか「イ」が小さくなるのに、「ゆつくり」「固まつて」は、昔風に、「つ」が大きいのです。

 冷たいおやつと言えば。1939年に、冷蔵庫なんてあったのか?
 氷で内部を冷たく保つタイプの冷蔵庫はあったようです。電気で中を冷やす、今使われているような冷蔵庫は、あったけど、高価で、あまり普及していませんでした。氷を家庭で気軽に作ることはできなかったのです。氷は買うものでした。でもアイスクリームは作る。氷に塩を入れて温度を下げて、その中で材料を入れた茶筒(円筒形で金属製で密封できる容器)を回して作ります。
 漢字のおやつもありますよ。水羊羹(みずようかん)・泡雪羹(あわゆきかん)・葛桜(くずざくら)・蜜豆(みつまめ)・餡入り白玉(あんいりしらたま)。
水ようかん作れるのか。ちょっと興味がわいてきました。
水ようかんのレシピは、餡300匁(もんめ)に水3合(3×180=540cc)、寒天1本。300匁でつまづいたのですが、1匁は3.75グラム。1㎏以上の餡に500cc以上の水に寒天を1本。1.5kg以上の水ようかんの生地。何人分なのか。たまたま売ってた水ようかんを見たら、内容量75グラムだったので、20個はできる。ちょっと大変か?
「お菓子屋のにも負けないくらゐ上手に作れますから、ぜひお試しください。」
ということです。どなたか作ってみませんか?

ピースあいちのウェブサイトで、画像がご覧になれます。
  http://www.peace-aichi.com/20100820_natsukashi.pdf

所蔵品の紹介のページはこちらです。バックナンバーの関連の画像も見られます。
  http://www.peace-aichi.com/05_objects.html