一年をふりかえって
事務局長   赤澤 ゆかり            

                                           
 

 ピースあいちの今年の大きな出来事は、なんといっても、5月の新館長の誕生でしょう。資料館の建設運動の時期も含めると約25年間、ずっとピースあいちを引っ張ってきた野間美喜子館長から、事務局長の宮原大輔さんへのバトンタッチ。
 小さな資料館にもかかわらず、『野間館長勇退、後任に宮原事務局長』『反戦の訴え 戦後世代に継承』などと、中日・朝日・毎日新聞が記事にしてくれました。それに伴って、思いもよらず、また分不相応ですが、わたしが事務局長になりました。ピースあいちができる前から関わって来たなかでいちばん若いメンバー、というのが推された理由だと思います。
 野間前館長はNPOの副理事長でもあり、当然、いまも運営に関わっています。館長が変わったからといって、ピースあいちの運営方針に変わりはありません。ただ、半年が過ぎたいま、新館長は「野間さんはこんなに大変なことをしていたのか…」と言っています。

 

 開館前にボランティアを募集する際の説明会で、わたしはこんな訴えをしました。「いろいろな考えの人がいて、いろんな運動をしている人がいると思います。けれど、次の時代の平和のために、平和憲法を大切に、戦争の遺産を後世に手渡していくという一点で協力してほしい」と。40人余の方が応募してくださり、とても感動したことを覚えています。(ピースあいちのボランティアは現在約100人です。)
 ピースあいちは運営委員も含め、「みんながボランティア」という組織です。一人ひとりの想いや希望で運営されています。限界もありますが、「こういうことをしたい」という一人の思いが、メンバーの共感を得て、議論を重ねるうちに、どんどん素晴らしい内容になって実現する。わたしはピースあいちで、そういう経験を何度もしてきました。これからもそうあるように、心を砕いていきたいと思っています。

 今年のピースあいちを振り返ります。
 団体の来館が増え、また「HPやツイッターを見て」と、県外のかなり広い範囲からも来館がありました。お客様をお迎えするとき、スタッフはいちばん嬉しい顔をします。
 昨年できた「ピースあいち語り継ぎ手の会」が7月、愛知高校生サマーセミナーでデビューしました。「語り手の会」事務局も、スタッフが増えて支援体制を強化。学生や現役で仕事をしている比較的若い世代が中心となって、「次世代交流チーム」もできました。さらに若い世代と交流を広げていきたいと、活動を始めています。
 自主企画の展覧会の主なものは以下です。

 

・第5回寄贈品展 ―戦争を語り継ぐモノたち― (2017/12/8~1/18)
・子ども企画展「戦争の中の子どもたち」と「戦争と動物たち」展 (1/24~2/17)(10/2~11/30)
・杉山千佐子追悼―「名古屋空襲と戦傷者たち」展 (2/27~5/19)
・企画展 沖縄の『こころ』- 追悼大田昌秀と儀間比呂志展 (5/29~7/7)
・特別企画展 高校生が描くヒロシマと丸木位里・俊「原爆の図」(7/24~9/2)
・第6回寄贈品展 「時代を超えて語り継ぐモノたち」(12/8~2019/1/19 )

 

 寄贈品展で始まり、寄贈品展で終わりましたが、どれも、「これをやりたい」というスタッフの強い思いがあって開催できたものです。
 杉山千佐子さんの追悼は、野間前館長の提案でした。野間さんは、弁護士として、もっと杉山さんにしてあげられることがあったのではないかという思いを抱いておられました。沖縄の『こころ』は、ピースあいちの旅行で戦時下の沖縄のハンセン患者のことを知った坂井さんが昨年提案した企画展の発展形です。大田元知事はピースあいちにも来てくださり、「ピースあいちのような資料館がやりたい」と言ってくださいました。高校生が描くヒロシマは、広島でその絵を見た下方さんがピースあいちで開催したいと願って実現しました。これをきっかけに、地元の高校生たちとのつながりも生まれています。

 今年は、来年度の企画を決めるために、ボランティアさんから「やりたいこと」を募りました。30もの企画案が出てきて、とても嬉しく思いました。すでに来年度の企画は決まり、いくつかはプロジェクトチームができて動き始めています。
 来年はできなくても、再来年にはできるようにしようというものもあります。時間をかけて企画を育てていくのは、きっと、楽しいことに違いありません。来年も、前を向いて進んでいきましょう。