◆ボランティア雑感◆ノーベル平和賞  
ボランティア・運営委員   林  和子            

                                           
 

 10月5日、2018年ノーベル平和賞の受賞者が発表されました。コンゴのデニ・ムクウェゲ医師とイラク出身のナディア・ムラドさんです。ノーベル賞委員会は「戦争や紛争下で弱い立場にある女性たちが人権を踏みにじられる現実を自らの危険を顧みず大きな声で伝えてきた」と説明しています。 
 報道によると、ムクウェゲさんは、1999年、コンゴ東部の紛争地域に婦人科医院を設立しました。性被害に遭った女性たちを診療するとともに、コンゴ政府や国際社会に対し、戦争犯罪に立ち向かうよう訴え続けてきました。ムラドさんは、イラク北部のクルド民族少数派ヤジト教徒。ISの攻撃にあい、家族を虐殺され、自身は拉致され、性奴隷として繰り返しレイプや拷問を受けたといいます。その後脱出し、国連安全保障理事会などで、紛争で犠牲になる女性の現状を訴えてきました。

絵はがき

 


 「ヤジト教徒?」「ナディア・ムラド?」どこかで聞いた?見た?そう、7月に、沖縄展で展示した儀間比呂志さんの版画の返却のため訪れた立命館国際平和ミュージアムで開催されていた「ヤズディの祈りー林典子写真展」でした。
 独自の宗教をもち、主に中東地域を本拠に暮らしてきたヤズディが、2014年、イスラム過激派組織ISによって多数が殺害され、女性は性奴隷にされる惨劇にみまわれたという。シンガル山周辺を故郷にもつ少数民族ヤズディがなぜ攻撃の対象になったのか、彼らの思いやその独特な信仰について取材された写真展でした。その中で、ナディアさんのことも触れられていました。「IS戦闘員に3ヶ月に渡り監禁され、強制的に“結婚”を強いられた23歳のナディアは、2015年9月にドイツへ渡り、現在は国連親善大使として虐殺の実態やヤズディ女性の悲劇の代弁者として世界中を回り活動している。2016年10月には欧州議会によりサハロフ賞を授与された」と。(*辞典によるとヤジディ、ヤズディ、ヤジドとも書かれるがヤズディの方が、本来の発音に近い)

絵はがき

 

 ピースあいちの常設展示の中に「現代の戦争と平和」のコーナーがあります。ここには「今も戦争はなくなってはいない。だが、平和を求めてたたかっている人たちもたくさんいる。今も多くの人ががんばっている」として、過去にノーベル平和賞を受賞したキング牧師(1964年)やネルソン・マンデラ(1993年)も取り上げられています。(メルマガ9月号ではガンジーが紹介されている)
 そして、ピースあいちからのメッセージとしてつぎのようなパネルがあります。

 希望を編みあわせる
 人類の歴史は/暴力と戦争の歴史だと/言う人がいる
 でも/人類の歴史は/平和を願ってきた人たち/平和をつくろうとしてきた人たちの/歴史である
 いま/平和をつくるために/なにかをしようとしている/世界中の人たちの希望に
 わたしたちの希望を/編みあわせていこう

 デニ・ムクウェゲさんとナディア・ムラドさんのノーベル平和賞受賞は、また一つ大きな希望を与えてくれました。