名城大学春日井(鷹来)キャンパス附属農場=旧・名古屋陸軍造兵廠鷹来製造所(陸軍工廠)跡地 見学会に参加して          
    名城大学の学生さんたち



 春日井にある名城大学附属農場は、かつて陸軍工廠として武器・弾薬を製造している場所でした。今日、学生が勉学に勤しんでいるその場所で、70数年前には約1,000名の勤労動員学徒が、兵器生産に従事していたのです。当時の司令棟の建物は、今でも大学が農場本館として使用しています(ほぼ完璧な形で残っています)。あまり知られていない施設ですが、日本有数の歴史的遺構です。
 またここには、1945年8月14日に、長崎型原爆のシミュレーション爆弾「パンプキン」が投下されました。この場所は、愛知が原爆と無縁でなかったことを示す場ともなっているのです。5月12日(土)、名城大学経済学部渋井教授の案内で、そうした一連の戦争遺跡の見学会が行われました。
 見学内容は、旧陸軍工廠の司令棟を中心に、屋上(カモフラージュのため緑化)や高射砲台座、陸軍の紋章跡、防火用水池、工廠跡地であることを示す石碑などを見学。また、パンプキン爆弾が着弾したであろうところまで歩きました。 (見学会の詳しい内容はこちら)  

 当日参加した名城大学の学生のみなさんの感想をご紹介します。

絵はがき

★★★
 行く前に先生から日本軍のマークが校舎にあると聞いていたが、実物を見ると思っていたよりくっきりと星のマークが残っていた。これには驚いた。
 普段は絶対に入れない屋上や、室内に入らせてもらった。屋上には絶滅危惧種である植物がいた。これらを絶やさないように熱心に世話をする教授の熱意を感じた。
 屋外で金子先生の講義を受けた。あらかじめ学校で戦争や原爆、模擬原爆の説明を講義で受けたが、実際に現場に行き、観察することで、座学ではわからない雰囲気や景色を感じ取ることができた。直接研究された方の話を聞くのは貴重だ。今までは原爆は戦争を終わらせるための手段として使われたのだと思っていたが、そうでないことを知った。戦争を体験した人が減っている現代で、追体験をして学んでいく姿勢がとても重要だと考える。
 帰りにバンプキン爆弾の着弾地点付近に行った。そこからかなり離れたところで爆弾の破片が見つかったと聞き、爆弾の威力がとても強かったということが想像できた。その付近にいた人はどうなったのかと考えてしまい、胸が痛んだ。そういった意味で、戦争は二度と繰り返してはいけないと思った。

★★★
 私は先日、社会フィールドワークの授業の一環で鷹来製造所跡(現名城大学附属農場本館)の見学に行きました。まずは資料室の当時使われていた農機具や木の展示、それから農学部の研究データの見学をしました。農機具はとても精巧に作られており、少し動かす事もできました。当時使われていた鍋、茶釜、土瓶なども展示してありましたが、結構雑に置いてあったので、個人的にはケースの中に入れるなどもう少し丁寧に扱ってほしいなと思いました。
 次に、普段は登れない屋上へ行きました。一見雑草にしか見えない植物でも、実はどれも絶滅危惧種など、かなり貴重な植物であることに驚きました。授業で習った機関砲の衝撃を緩和するために盛られた部分も実際に見学できたので良かったです。また、外の時計と陸軍の紋章から、本当にここが昔陸軍工廠であったことをしみじみと感じました。
 ひとしきり見学が終わった後、金子先生による講話が行われました。春日井でパンプキン爆弾による爆撃があったこと、工場の規模など貴重なお話が聞けました。
 私は、今回のフィールドワークを通して、今まで他人事のように思っていた原爆が、地元・春日井に大きく関わっていたことを初めて知りました。ここ十年間で実際に体験した人の人数はだいぶ減っているし、学校の授業ではこの時代の授業は時間の関係で深くやる機会なんてないし、特に高校が商業で社会の授業が少なく戦争の話は修学旅行の時しか触れていないため、原爆に春日井市が関わっていた事実を知った時、やるせない気持ちになりました。
 機会があれば、この話を母校にもしたいなと思いました。

絵はがき

★★★
 座学でいくら戦争について学んでも、私たちにはそれを想像して当時の事を追体験することしかできない。しかし、実際に模擬原爆であるパンプキンが投下された場所や軍工廠の跡地を自分の足で歩くことで得られるものが多かった。既に軍工廠のかつての光景は殆どなくなってしまっていたが、それでも多くの名残があったように思う。陸軍のエンブレムがあった跡、高射砲の台座があった土の盛り上がりなどは、当時を想起する際の重要な要因になると思う。
 新しい発見もあった。一階を地面の下に隠すことで、万一攻め込まれてもそこから脱出できるというものであった。これもまた、私が鷹来製作所跡の出来事を追体験する上で役立つと思う。
 春日井での実地実習は非常に素晴らしいものであったが、これだけのツアーを一握りの人間しか体験できないことはもったいないと感じた。陸軍工廠の司令室が壊されてしまったこともそうだが、農機具の展示にまったくキャプションがないことなど、名城大学側が消極的だと感じた。大学を挙げて、もっと鷹来で起きたことを世に広めるツアーを多くの人に体験してもらえればと思う。

★★★
 見学前までの授業を通して、愛知の空襲やその被害を学んできました。生まれて育った土地ではない分、この社会フィールドワークをとっていなかったら、一生知ることのないことだらけでした。
 春日井農場を見学して、実際の被害規模を知ることができました。また、工廠時のものを見ることができ、学ぶ事だけでなく、実際に見ることは大切だと思いました。

★★★
 土曜日がとても暑かったからかもしれませんが、昔、あの工廠でもエリをつかんで暑い暑いと言いながら一生懸命働いていたかと思うと何とも言えない気持ちになりました。
 また、緑化された屋上は機関砲があったであろうところが盛り上がっていたり、防火槽があったりと、戦争の跡も色濃く残っていることを考えると、日常と戦争の非日常が一緒に存在していることが見えてきて、本当につらくなりました。
 戦争を考えるうえでとても貴重な体験でしたし、自分の知っている知識だけで物事を考えてはいけないことも、金子先生のお話をきいて改めて思う機会になりました。

★★★
 私はまず、原爆投下の前に模擬爆弾「パンプキン」が名古屋に投下されていたことを知りませんでした。というか、まず今の学生の大半はそのことを知らないでしょう。私は渋井先生の授業で初めてそのことを知り、少し驚きました。
 投下された数も半端なものじゃなく日本全土合計49発と聞き、たくさんの方が犠牲になったと思うと心が痛いです。1.2Kmまで破片が飛び発見されたと聞きました。追体験をしてみましたが、とても恐ろしいと私は強く感じました。付近にいた方はひとたまりもありませんね。
 戦争を追体験できる機会なんてめったにないので、とても良い経験になりました。戦争を直接経験体験された方の人口が減っていくと思うので、我々がしっかり戦争の知識をつけなければいけないと感じた。

絵はがき

★★★
 建物を見た第一印象は、明治村にありそうな古い建物だということだった。同時に、今でも現役として使われていることに驚く。
 一部工事が行われてきれいになっていた所もあるが、内装は基本的に当時のままを保っている。農具の展示も興味がわくが、説明文がないため、目の前にあるこの道具が何に使われていたのかわからなかった点が残念だ。
 昔の窓などほとんどそのまま残っており、写真を撮るという観点でなくても貴重で、よくこのまま残っているなと誰もが思えるのではないだろうか。屋上では大砲の跡など見学することができ、博物館ではない本当に使われていたという事で貴重な体験をした。
 青空教室での金子先生の話は本で読むのとは違い、実際にたくさんの資料を読んでこられたということでわかりやすく、聞いている人にも当時の事を思い起こさせるようでとてもよかった。僕も古地図が好きなので、当時の地図を見ながら遺跡見学もしてみたいと思った。
 自分は東京から来たため、愛知の空襲についてあまり知ることがなかった。大学に来て、今住んでいるこの地について考えてみたいと思う。
 僕は道の成り立ちや地名の歴史が好きだ。地名はその土地の昔を知る重要な手がかりの一つである。江戸、明治期のその地を知ることができたり、合併の歴史を知ったりできる。道も同じで、戦時中飛行機の滑走路だったりする。このような二つの視点から街を見ることが多かったが、今回、一つの工廠を見学し、戦争のおかげでできた街もあることを知った。
 当時の事を知っている人は少なくなってしまった。実際に体験してしまったからこそ聞ける話を聞いてみたいと思った。

★★★
 僕はこのフィールドワークの授業を受けるまで、名城大学の春日井キャンパスが戦争に関わっていたという事を知りませんでした。しかも僕は春日井から近い所に住んでいるにも関わらず、知らないというところが情けないなと感じました。しかし、この話を親に話してみると、親もこの事を知らないというのでびっくりしました。この授業で春日井が戦争に関わっていたという事を知ることができ、本当に良かったと思います。
 僕がこの見学会を通して一番印象に残ったことは、農場本館の屋上が緑化されているところを歩くことができたということです。
 屋上が緑化されているというのを写真では見たことはありましたが、本物を見たのは初めてだったので、いろいろと想像と違う所がありました。一つは、自分が思っていたより緑が生い茂っていたということです。近くに行ってみて初めて分かったのですが、意外と生い茂っているなという印象でした。まだまだおもしろい所はたくさんあり、見学することができて良かったなと思いました。普段は入ることができないということなので、とても貴重な経験ができたなと思いました。
 また、本館を見学した後に金子さんの話を聞くことができ、それも貴重な体験で、良かったです。
 次に、碑を見学するという所でびっくりしたのが、碑がある前の道を自分が通ったことがあるのに今までその碑に気が付かなかった事です。この授業をするまで気が付かなかったのですが、この見学をきっかけに知ることができました。
 今回の見学会で僕が学んだことは、自分が知らないかったことや、目を向けてこなかったことに目を向けることによって、いろいろなことが見えてくるという事です。そのことを一番感じられたものは碑をみたときです。今まで何気なく通ってきた道なのに、今回の見学会で印象がとても変わりました。名城大学の春日井キャンパスも同じく、今までとは違った視点でみるようになりました、そのような点で、今回の見学会は自分にとって良いものになったのではないかと思います。

★★★
・軍のマークが残っていて、本当に軍の施設だったんだなと実感した。
・屋上がすみからすみまで緑化されていたし、もり上がっている所も見つけられてよかった。
・パンプキン爆弾が落とされ、多くの自分と同じ若い人々が亡くなってしまった地へ、授業の一環として訪れて、自分がどれだけ幸せなのか実感した。勉強したいと願っていたが叶わず工廠で働いていた若者が多かった当時と比べて、自分はやりたい勉強ができて、食べるものにも不自由していない「日常」が奇跡のようなんだと思った。