語り継ぐ悪魔の731部隊
◆「長き沈黙 父が語った悪魔の731部隊」の著者神谷則明氏の講演を聞いて          
ボランティア  林   收



「マルタ(注1)の死を歴史のいましめとし 永遠の不戦を誓い合ってほしい」
 作家森村誠一の『悪魔の飽食』の中の一節です。
 ピースあいちの2階展示室の壁面パネルに「731部隊による細菌兵器の人体実験」があります。写真2枚とわずか40行余りの説明で終わっていますが、軍隊内部でも隠匿に徹した731部隊に課された使命は、地球上の他国人類を細菌などで全滅させようという企みがあったものです。

 「語り継ぐ悪魔の731部隊」と題する神谷則明氏の講演をピースあいちで聞いたのは今年4月22日でした。731部隊に従事したお父さんから戦後50年間伏せられていた実態を聞き取ったことから講演を重ねてきたものでした。
 死に直面したお父さんが則明氏に、もし中国へ出かけることがあったら、花を手向けて謝ってきてほしいという言葉を残されたのを機に、ハルビン近郊の731部隊跡などを回って慰霊し、記念館の侵華日軍第731部隊罪証陳列館も訪れて帰られました。

展示室

侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館(しんかにちぐん だいななさんいちぶたいざいしょうちんれつかん)は、中華人民共和国黒竜江省ハルビン市平房区にある戦争祈念施設―大日本帝国陸軍731部隊の施設の跡地に建設されている。2006年には全国重点文物保護施設に指定され、2012年には世界遺産候補名簿に登録された。遺跡内にあった工場などが移転したことから発掘作業が進み、世界遺産申請に向けた遺跡の整備が行われている。抗日戦争70周年を記念して展示館の全面的な拡張が行われ、2015年8月15日に新館が開館した。6つのゾーン(中国侵略日本軍細菌戦、731部隊日本軍細菌戦の大本営、人体実験、細菌兵器の開発、細菌戦の実施、証拠と裁判)に分れている。2017年8月には開館2年間で190万人以上の入場者があったことを発表した。

 脳出血を患ってからも口述力の障害を克服し、車椅子使用ではありますが現在も各地での講演に努められていることがわかりました。
 1時間半の講演内容は、おそらくお父さんから打ち明けられた内容の数十分の一程度かと思いましたが、著述された『長き沈黙 父が語った悪魔の731部隊』を当日買って帰り、一気に読み終えました。

展示室

若者たちに語り継ぐ戦争の真実
著者の父神谷實氏は自らが隊員であった旧日本軍731部隊の罪状をマスコミに告白し、その2年後に世を去った。
父の遺志を受けて、470回におよぶ「語り継ぐ活動」をおこなってきた著者神谷則明氏。「憲法改正」が声高に叫ばれ、70年間守られてきた平和憲法が脅かされる今、学びとってほしい戦争の真実を伝える

 講演で特に印象的だったのは、日本の国民の祝日には今もって皇室に由来するものが多くあるという説です。

 年間の祝日16(マンデー振替を除く)のうち以下のごとく半数が指摘に当たります。
1.建国記念の日(2月11日) 初代天皇とされている神武天皇が橿原宮において即位されたとするいわれになっています。戦時中以前は「紀元節」と呼ばれていた
2.春分の日(3月20日or21日) 戦時中以前は、春季皇霊祭という祭日
3.昭和の日(4月29日) 昭和天皇が皇位にあったときは天皇誕生日。戦時中以前は天長節
4.海の日(7月の第3月曜日) 祝日となる前は、「海の記念日」という記念日で、その由来は、明治天皇が東北地方へ行かれる際に、初めて軍艦でない艦船で航海をし、7月20日に横浜港に帰着した日に始まる
5.秋分の日(9月22・23・24日のいずれか) 戦時中以前は秋季皇霊祭という祭日
6.文化の日(11月3日) 戦時中以前は、「明治節」という明治天皇の誕生日を祝う祝日
7.勤労感謝の日(11月23日) 戦時中以前は「新嘗祭(にいなめさい)」という祭日で、神道の行事として一年の収穫を感謝する日
8.天皇誕生日(12月23日) 現天皇の誕生日で、戦時中以前はこれに当たる日を「天長節」と称していた

(注1)マルタとは憲兵隊や特務機関から送られてきた中国人、朝鮮人、ロシア人などの捕虜や囚人の呼び名。