◆所蔵品から◆資料ナンバー1592その他 主婦之友の連載小説「おばあさん」の話
資料班



主婦之友 1938年3月号

主婦之友 1938年3月号

 先月は「主婦之友」から、戦争中の献立カレンダーをご紹介しました。
 同じ「主婦之友」に、獅子文六の「おばあさん」という小説が載っていました。
 どこかで見たことあると思ったら、最近文庫で出ているのですよ。戦争中の、75年前の連載小説が今書店でゲットできるのがおもしろいと思ったので、今回はこの「おばあさん」をご紹介したいと思います。

主婦之友 1938年4月号

主婦之友 1938年4月号

 さし絵は田代光。まじめで端正な感じもしながら、がさがさした線の運びとか人物の表情とかに、遊びというか人間味も感じるような魅力的なイラストだと思います。 
 作者獅子文六は、1930年代から1960年代まで活動した小説家です。演劇にもかかわっています。「おばあさん」にも、主役の息子(年の離れた末っ子)が築地の劇場で演出をしているという場面が出てきます。

 ピースあいちにある「主婦之友」の中で、1938年の3・4・5月号に「おばあさん」が載っているはず。探してみたところ、3月号、4月号には載っていました。5月号は、目次には載っていたのですが、「おばあさん」の載っているページは切り取られていました。

これまでのあらすじ

「おばあさん」これまでのあらすじ
主婦之友 1938年3月号

 3月号に載っていた「2月號(号)までのあらすぢ」をご覧いただきます。
 1942年2月から1944年5月まで連載されていたので、1943年3月だとちょうど中ほどになるでしょうか。
 孫の丸子の縁談、娘の夫の「不行跡」(ふしだら)、演劇をしてて稼ぎのない三男の将来の不安など、ドラマとしてはベタなほど盛りだくさんです。
 戦時下ならではの描写もあります。(ここからは文庫版を買って読んだ内容でお話しします。)
 丸子の見合い相手は召集されるし、おばあさんの息子の一人は大陸に行ってます。お菓子を買おうと思っても、なかなか手に入りません。娘の夫の「不行跡」の相手の女性に渡った「三百円」は、新聞社の飛行機献金に寄付されます。
 舞台は昭和16年(1941年)です。小説のなかでも12月8日の朝にラジオで「臨時ニュース」が入ります。
 「耄碌(もうろく)もうっかりできない」と書いてある「おばあさん」は数え年で69歳。まだ若いんじゃないの、と今の感覚では思ってしまいます。

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主婦之友 1943年3月号「おばあさん」広告

 連載小説と同じページに載っている広告をご覧いただきます。
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「第2回『軍国の母』表彰」 「軍国の母を御推薦下さい」
「黙々ただ国のため家のため子のため良人のため働き続けた『母』の力!
『軍国の母』と呼ぶにふさわしい方を御推薦下さい。」

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「主婦之友社長 石川武美著 わが愛する家庭」
「姉妹編 わが愛する生活」

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「主婦之友花嫁講座」
「新学期の教育書 母の愛育全集」
「主婦之友型紙叢書」

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「主婦之友社刊 病院船従軍記」

文庫

朝日文庫 「おばあさん」 獅子文六
(フセンたくさん付きました)

おまけ 今回読んだ文庫です。
「おばあさん」 獅子文六
朝日文庫 2017年8月30日発行


詳しい画像はこちらからどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/pdf/20180523_shishibunrokuobaasan.pdf

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