名古屋空襲から73年 空襲犠牲者追悼の夕べ◆朗読と歌で参加して
緑風の会  塩見 郁子         

                                           

 
展示室

朗読と歌を披露してくださったみなさん

 昨年に引き続き、「ともし火法要」に参加し朗読と歌を聞いていただきました。緑風の会としての参加は4回目になるかと思います。
 内容としては、愛知時計に勤めていた20歳の女性の空襲体験、峠三吉の原爆の詩、音楽評論家で作詞家でもある湯川れいこさんの戦争体験手記を朗読し、南山国際中学生が清らかな声で「ふるさと」「椰子の実」をアカペラで歌いました。

 今回、特に感じたのは、朗読を聞いてくださる方たちの雰囲気が変わっていたことです。一言で言えば、若くなっている! 今年は杉山千佐子さんの追悼企画を兼ねて「椙山女学院高校生の戦争体験語り継ぎ」があったために、制服姿の彼女たちも聞いてくれたのです。
 しかも、真剣な表情で真っ直ぐな視線を送ってきます。いつにも増して喉がカラカラになってしまいました。

 

 「戦争」を自分の体験として語れる人は年々少なくなりました。また、当時は幼すぎてわからなくても、体感として後悔や悲しみの染みこんでいる世代は高齢化の一途です。そういう方は私たちの朗読を聞きながら、ご自分の体験も重ねておられるのか、遠い目をしてうんうんと頷かれます。
 そして私たち緑風の会はと言えば、もうひとつ下の世代。父母の体験や平和教育のもと厭戦感はあるものの次世代への申し送りをするには説得力を欠く世代と言えるかもしれません。しかも悲惨な事実に目をふせて高度経済成長をひた走ってきました。
 だからこそ、自分なりに時代考証をして想像をめぐらせ、書いた方の思いに添って戦時中の手記を読む必要があります。語り部にはなれなくても、丁寧な朗読を続けることで若い世代に平和のバトンを引き継ぐお手伝いをしなくてはと感じています。

 毎夏、緑風の会は名城大学の学生さんたちの前で「愛知空襲」の朗読をします。今年で8年目になりますが、その中の「豊川空襲」では、被災した身内の生死を一刻も早く知りたいと駆け回る家族の様子が何通もの手紙にしたためられたものがあります。
 期待と絶望・・・それがあまりにも切なくて、思わず男子学生の目から涙がこぼれたり、どこからか鼻をすする音が聞こえることもあります。若い学生さんたちは純粋です。
 同情や過去の悲劇の物語で終わらせず、今の暮らしとつながっていることに気づいてもらえるか、未来を展望し、選択する資料としてもらえるか、若い人たちの感性、見識に期待したいです。