今年のピースあいち「沖縄展」は…  
沖縄展企画チーム 阪井芳貴(名古屋市立大学教授)          

                                           
 

 今年度の沖縄企画展は、「沖縄の『こころ』 追悼―大田昌秀と儀間比呂志展」と題し、昨年相次いで亡くなった大田昌秀氏と儀閒比呂志氏の業績を偲び、彼らの生きた・見た沖縄を知る展示とすることになりました。

 大田昌秀氏(1925-2017)は、沖縄県知事として日本政府と対峙し沖縄の自立・自己決定権の確立・沖縄差別の解消を追求したことで知られますが、その思想と行動の根底には苛烈な沖縄戦体験がありました。鉄血勤皇隊の一員として戦場で経験した憤りや悲しみを、生き残った者の使命としての沖縄の再生に尽くすエネルギーに変え、強靱な精神で平和な沖縄を創造するために一生を捧げたのでした。その一生を振り返ることで、戦前戦後の沖縄の足どりと現在を考える機会にしたいと考えています。

絵はがき

ピースあいち開館1周年イベントで講演する
大田昌秀さん(2008年5月29日、名東文化小劇場)

 大田氏は、ピースあいち開館一周年記念特別展「沖縄から平和を考える」における記念講演にご登壇くださり、超満員の名東文化小劇場の聴衆の感銘・感涙を誘うお話をされました。その後も、多数のご著書を寄贈くださるなどしてピースあいちを支えてくださり、昨年発刊した10周年記念誌には、ピースあいちの飛躍を祈る熱いメッセージも寄せてくださいましたが、それからまもなくニライカナイへ旅立たれました。ピースあいちのスタッフ一同、大田氏への想いを今回の企画展に実らせたいと努めています。

 

 儀間比呂志氏(1923-2017)は、沖縄では非常に著名な版画家・絵本作家です。那覇市に生まれ、南洋諸島で少年期を過ごし、横須賀で終戦を迎え、その後大阪で本格的に画に取り組み、独自の世界を確立されました。戦後初めて沖縄に帰った1956年から沖縄を描くようになり、沖縄の民俗生活・沖縄戦・沖縄の戦後社会を非常にインパクトのある画風で表現し続けましたが、昨年春、惜しまれつつ後生(ぐそー)に旅立たれました。
 今回の追悼展では、昨年の愛楽園展(知られざる沖縄のハンセン病について識る)を受けた形で、儀間氏の沖縄のハンセン病を描いた絵本「ツルとタケシ」の原画を愛楽園からお借りし、さらに立命館大学平和ミュージアムからも原画数点を拝借し、儀間氏が愛し憂えた沖縄を感じていただきたいと考えています。

 

 おそらく、大田昌秀氏と儀間比呂志氏を一緒に追悼する企画は、全国的にも例がないと思います。この企画展を多くの方にご覧いただき、沖縄を心から愛し、平和を心から願った二人の巨人の生涯と作品から、沖縄を知り考える機会にしていただければ幸いです。