戦争体験 語り継ぎ手の会~新しい心のリボンを結ぶために  
ボランティア 下方 映子           

                                           
 
絵はがき

「戦争体験 語り継ぎ手の会 リボン」第1回例会

 9月に結成された「戦争体験 語り継ぎ手の会」が、11月18日に初めての例会を開催しました。入会希望者約40名のうち当日ご都合のついた15名の方々と、事務局スタッフ11名が参加。10代から97歳まで、バラエティに富んだ初顔合わせです。
 自己紹介で和んだ後、会の愛称を決めることになりました。選ばれたのは『リボン』という名前。世代や立場を超えて戦争体験を共有し、平和な世界を求めて心を結び合うイメージです。これからは、「戦争体験語り継ぎ手の会 リボン」と呼んで、長く親しまれるものにしたいと思っています。
 お話を聞くと、戦争体験者やその家族・親族だけでなく、朗読や映像編集の技術を持ち、それを語り継ぎに活かせないかと思って入会した方が何人もおられました。さて、皆さんのこの熱意をどうつなげばよいでしょうか。

 当館には「語り手の会」があり、戦争体験者本人が来館者に語るほか、学校へ出向いて子どもたちに体験を語る活動を開館以来続け、延べ4万人が聞いて下さいました。これは、ピースあいちの活動の中でも大変重要なものの一つですが、語る人もサポートするスタッフも高齢化が進み、この先の継続が危ぶまれています。また、これまで語られなかった戦争体験が、誰にも知られないまま失われてしまうタイムリミットも近づいています。
 「リボン」では、①新たな体験談の掘り起こし②文章や映像による記録③「語り継ぎ手」の養成④「語り手の会」のサポート などを進める方針です。

 広島に、素晴らしい「語り継ぎ」の形があります。市立基町高校の「高校生が描く原爆の絵」プロジェクトで、被爆者にお話を聞いてその体験を生徒が絵にする取り組みを10年続け、100点を超える「原爆の絵」が完成しています。
 想像を絶する他人の体験を絵で表現するのは、高校生にとって苦闘の連続です。その人の言葉を心の深くに取り込んで、自分の「人間力」をかけて対峙し、語られたイメージ通りの情景を再現しなければなりません。絵が完成する頃には、彼ら自身が大きく変わります。
 高校生たちは、「制作を通じて変わった“新しい自分”には使命がある」と言います。その時、「戦争体験」は本当の意味で受け継がれて、永い命を得るのだと思います。ピースあいちは、この『高校生が描く原爆の絵』を来夏の企画展でご紹介する予定です。

 私たちのリボンも、そんなふうに誰かと誰かを結びたい。新しく来てくれた子どもたちが何かを感じ何かが変わるような、生きた継承の形を探してゆく。その一歩を踏み出したところです。