ピースあいちでのゼミ学習  
愛知学院大学法学部講師 尋木 真也         

                                           
 

ピースあいち訪問概要
 2017年11月18日(土)に、愛知学院大学法学部2年生のゼミ生とピースあいちを訪れました。当日は、吉田理さんの名古屋空襲体験談をうかがったうえで、服部忠一朗さんから展示の解説をいただきました。
 ゼミでは国際法を学んでおり、今は名古屋空襲の法的再検討に取り組んでいます。このような検討を行うにあたっては、まずは事実を正確に知ること、そして戦争の悲惨さを少しでも身近なものとして感じることが重要です。こうした前提を教えていただく目的で、ピースあいちのみなさんのお力をお借りしました。

絵はがき

吉田理さんの名古屋空襲体験談を聞く

名古屋空襲の体験談
 吉田さんの体験談には、ゼミ生一同衝撃を受けたようです。わんぱくで勇ましかった吉田少年が、鶴舞公園で赤く蒸し焼かれた死体の山を目の当たりにして、一転疎開を決断されたことについて、自筆の絵画を通じてご説明いただきました。
 こうした凄烈な惨劇の疑似体験を通じて、軽々しく違法・合法と判断して済ませられないことを痛感しました。また、近年、北朝鮮問題や憲法9条の改正、安全保障法制の整備等について、戦争を知らない私たちが多くの議論をしています。こうした議論のなかでも、真の平和の実現のために、本当にあるべき法を追求しなければならないという感情が深く胸に刻まれました。

絵はがき

ボランティアのガイドで展示を見る

戦争の展示
 名古屋空襲を含む15年戦争の展示解説からは、吉田さんの体験談の背後にあるさまざまな事実について学びました。名古屋城の炎上やパンプキン爆弾の投下といった事実に加え、焼夷弾が貫通した天井の実物や、弟の死体を背負い、焼却場で順番待ちをする少年の、感情を押し殺した表情を記録した写真などを拝覧し、胸が詰まる思いでした。
 法的に物事を考える際には、客観的に事実を把握し、客観的に法を適用する必要があります。ただし、法には解釈の余地があり、とりわけ国際法にはその余地が大きく残されています。当時の戦争法は、現在に比べ空隙の多いものでしたが、今回の訪問で、法の解釈にあたって考慮すべき大切なことを学ばせていただいたように思います。

東山動物園の訪問
 ピースあいちの訪問の後、平和公園を経由して、東山動物園に行きました。シャバーニのイケメンゴリラぶりやフクロテナガザル・ケイジのすさまじい鳴き声を楽しむ一方で、絵本『ぞうれっしゃがやってきた』関連の象舎展示の観覧を通じて、戦争の勉強の続きを行い、戦時中の名古屋に思いを馳せました。

ゼミでの学習と研究発表
 大学の教室の机上で学ぶだけでは、理解に限界があります。今回のピースあいちの訪問では、立体的・ビジュアル的に学ぶことができ、私たちの知識や理解の不足を十分に補っていただきました。こうして、客観的な事実と主観的な人の気持ちを知ったうえで、現在ゼミのなかで名古屋空襲の法的研究を進めています。学生は、まだ国際法を学び始めたばかりですので、頭を抱えながら議論をしています。それでも、自分たちなりの正解を求めて、一歩ずつ前進しています。
 このたび、2018年3月3日(土)に、この研究成果をピースあいちで発表させていただくことになりました。まだ得心のいく結論にまでは至っていませんが、一生懸命がんばりますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。