松本猛さんの講演会「母 いわさきちひろを語る」を聞いて         
ピースあいち会員 池田 美恵子



加藤さんと堀田さん
 

 1階の交流広場は、いわさきちひろの、ご子息であられる松本猛氏のお話を楽しみに約80名のちひろファンで満員になりました。私とちひろの絵との出会いは約40年前、名古屋市立保育園に採用された年で、絵本『あかちゃんのうた』です。人差指を口に吸って左耳をつまんでいる赤ちゃんのかわいい指先、愛くるしい瞳。それは園児と重なりました。
 ちひろの絵はいつでも私を穏やかな幸せな世界へと誘ってくれます。こんなに優しい気持ちになれる絵を描くちひろは、どんな生き方をしたのだろう。松本猛氏の話を興味深く聴くことができました。

 

 印象に残ったお話では、ちひろが『戦火のなかの子どもたち』に取り組む時の事です。「あなた、絵本の構成を考えてみない?」とちひろに言われ、アトリエによく入るようになり、母、ちひろの仕事は面白いと気付いたそうです。初めて認められた事がとても嬉しくて一緒に絵本を作ることにより、密度の濃い時間をちひろと過ごせた事を生き生きと語ってくださいました。
 『戦火のなかの子どもたち』の校正刷ができ上がった時、一点だけ入れ替えてほしいとちひろに言われ、それは「母さんともえたちいさなぼうや」のページで、この本に大人が登場するのは初めて。ぎっと睨みつける表情は戦争への怒りであり、ぼうやをしっかり抱いているのは命を守らねばという母の強い意志を表しています。
 『戦火のなかの子どもたち』は、ちひろが55歳で亡くなる前に平和を願って描いた最後の絵本です。ベトナム戦争の渦中にいた子どもたちに思いを馳せ、第二次世界大戦とも心の中で重なりあったのです。    

 

 二度と戦争をしないと誓った九条を持つ日本国憲法を守り抜きましょう。ちひろの願った平和や子どもたちのしあわせのために。ちひろの絵から私に生まれた歌があります。

    最愛の夫善明に寄り添えるちひろの真事(まこと)しあわせそうに
    春を摘んで来たよと告げる女の子蕨(わらび)の束を胸に抱きて
    花びらのような雪だねほっこりと赤い毛糸の帽子の少女
    「たて膝の少年」のモデルは僕ですと松本猛の満面の笑み
    戦争のふたたびあるなと吾が祈る『戦火のなかの子どもたち』を胸に