『いわさきちひろ展』を見学して 
東海高校サークルかんげき代表 山口 智代美 



 
表紙

ちひろの絵本をかざしてお話する西形久司さん

 東海高校『サークルかんげき』の企画で、『いわさきちひろ展』を拝見させていただきました。私がこのサークルに入会してから、サークルの企画でこちらの「ピースあいち」へお邪魔するのは2回目です。サークルでは、展示を見るだけではなく、東海高校社会科の西形久司先生に特別講義をお願いし、展示を理解する上でとても参考になるお話を聞かせていただいております。今回も『いわさきちひろの生きた時代』というタイトルで、お話ししていただきました。

 

 いわさきちひろさんは、裕福な家庭の長女として生まれ、教師であるお母様がお勤めの『東京府立第六高等女学校』へ通われました。こちらの学校は、逞しく自立した女性をめざすという校風で、ここでの教育が後のいわさきちひろさんへ大きな影響を与えたそうです。絵本や挿絵を作品として認めてもらえない時代にあって、作品をぞんざいに扱われることに堂々と抗議をする。当時の女性では考えられない行動力は、女学校時代で培われたのだと思います。
 いわさきちひろさんがどんな人生を歩んできたのかを勉強した後、3階の展示会場へ行きました。こちらでは、ピエゾグラフという手法で原画に近い形で再現されたものを約30点、閲覧用の絵本も何点か置いてありました。閲覧用の絵本には、点字のシールが貼られたものもありました。こちらは、個人の方が点訳して寄贈されたものだそうです。
 会場へ入ると、優しい色使いの可愛らしい子供たちの絵が迎えてくれ、絵の中の子供たちが生き生きと息づいていました。また、綺麗な色彩の絵ばかりではなく、黒一色で描かれたものもありました。中でも印象的だったのは、チラシにもあった「焔のなかの母と子」の絵です。母親のまなざしから、戦火の中で子供を守ろうとする強い意志を感じました。他にも、子供の作文に挿絵を描いたものもありました。

 

 私のいわさきちひろさんのイメージは「優しい色の可愛らしい子供の絵」だったので、『ピースあいち』の10周年特別企画という理由が分からなかったのですが、今回の展示作品を見て、優しさだけではなく戦争への強い抗議を込めた絵を描かれていたのだとわかり、特別企画にふさわしい展示だと思いました。
 帰宅後、いわさきちひろさんの「緑の風のなかで」の絵を飾りました。絵の中の女の子が娘の小さい頃のイメージだから・・・と、以前引っ越すときにいただいたものです。久しぶりに優しい風が吹いたような気がしました。