◆映像による学習会―映画上映とトークの集い◆
丸木位里・俊「原爆の図」と市民が描いた「原爆の絵」展の関連イベント   
明治学院大学国際平和研究所研究員・客員 高橋 博子



 本作品はロバート・リクター(Robert Richter)監督と、核廃絶のための教育に取り組んできたキャサリン・サリバン(Kathleen Sullivan)博士が共同プロデュースした『最後の原爆(The Last Atomic Bomb)』(2005年・92分)に続くドキュメンタリー映画である。社会派ドキュメンタリーを製作してきたリクター監督は、デュポン・コロンビア・放送ジャーナリズム賞(テレビ界のピューリツァー賞)を3度も受賞しており、長年人権問題や環境問題に取り組み、87歳になった現在も制作活動を行っている。サリバン博士は軍縮教育家・核廃絶活動家で、同ドキュメンタリー映画のDVDのパンフレットとしてAn Action and Study Guide: The Ultimate Wish Ending The Nuclear Ageを製作し、学校教員と生徒のために、本映画を観た後、究極の望み、すなわち核兵器と原子力発電を廃絶し、核時代を終わらせるための具体的な教育・行動・情報を紹介している。  リクター監督とサリバン博士は、2011年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故後、長崎の被爆者と福島からの避難者の切実な証言を中心に描いた本作品を製作した。ニュース映像、専門家・活動家の証言をおりまぜつつ、原爆と原発による被災者の視点で、その惨状が隠されている問題を提起している。核時代を終焉させるという究極の願いが込められた作品である。

加藤さんと堀田さん

チラシ

 

 上映後、このようなドキュメンタリーを、とりわけ若者に広めてゆくにはどうしたらよいかについて、会場参加者から議論があった。また、東日本大震災による東京電力福島第一原発事故の影響について、名古屋など離れた地域では関心が薄いのでは、と問題提起があった。大学講師の方から、実際に大学教育の中で、『最後の原爆』を上映したことにより、大学生に確かな手ごたえがあった例も紹介された。また、リクター監督と同じ年代のピースあいちのボランティアの方から、小学生に戦争体験の証言を行ってきたが、自分が結論を述べるのではなく、子どもたち自身が考えるよう意識してきたことが語られた。
 知性と感性に訴え、観るものに考えさせる本ドキュメンタリーを、より多くの人々と共有してゆくためにも、上映後、大事な議論ができたと思う。