中学生も日本の行末を心配している◆展示ガイドをして  
運営委員 野田 隆稔



絵はがき
 

 今まで、小学生から大人まで、100回以上の展示ガイドをしてきた。1階から3階までを45分ぐらいで説明しなければならないので、時間が足りない。戦争や歴史の知識が少ない小中学生たちに、実物や写真を見てもらいながら、戦争の実相を説明している。と同時に、質問をし、考えてもらうようにしている。

 

 名古屋空襲のところでは「名古屋の空襲は日本で何番目か?」 大体の子どもは「東京・大阪に次いで3番目」と答える。「どうして名古屋は空襲を受けたのだろう?」「軍需工場が多かったからだ」と正解を答える子もいる。
 「日本の兵士の写真」の前では「230万の兵士が死んだんだよ。そのうち、6割から7割は餓死と病死だよ」というと、子どもはびっくりする。
 ガイドを始めた最初の頃に、原爆ドームの模型の前で、ある子が「この死体、頭がない」というと「足がない」「手がない」という声が上がり、自分が気が付かなかったことを教えられ、子どもの感性に感動した。
 「動物と戦争」では、犬猫のペットが戦争に駆り出されたことを知り、ペットを飼っている子が「絶対いやだ」と、口をとがらせて言う。パネルにはないが、ネズミも細菌戦のために利用されたという話もする。

 

 最後に、「君たちにとって平和って何だ」と聞いてみる。一番多い答えは「戦争や争いのないこと」である。他は「当たり前の生活ができること」「食べることができること」「不安なく暮らせること」「幸せな生活ができること」である。私は「すべてが正しい」と言っている。
 小6の女の子が、こんなことを言った。「笑顔があるのが平和だ」と。今まで聞かなかった言葉なので、「どういうこと?」と聞くと、「戦争をしていて、攻撃におびえていたら、笑顔になる人はいない。うれしくなる人はいない」と答えてくれた。これはすごい指摘だと、その子の感性の豊かさに感動した。

 昨年来た中1の男の子が、ガイド中に「日本って戦争するのかな」と言った。安保法制のことを親から聞いたり、マスコミで知ったりしているのであろう。近未来に戦争が起きるとしたら、彼らは成人になっており、もろに戦争の影響をうける年齢である。子どもたちが日本の行末を心配していることを知り、衝撃をうけた。子どもたちの笑顔を保ち続けることが大人の使命だと思った。
 戦争の体験をしている人の中には、「疎開体験」や「空襲体験」を語りだす人もいる。最後に「戦争は絶対やってはいかん」と言われる。ガイドをしていると、自分も勉強になる。