◆所蔵品から◆資料ナンバー7270 「御製謹解」の話 資料班



「御製謹解」

「御製謹解」 名古屋陸軍造兵廠

 今月は、「……謹解」をキーワードに、ご紹介していこうと思います。
 まずは、「御製謹解」。御製は、天皇の作った和歌のことです。5首の和歌が載っています。(調べてみたら5首とも明治天皇の「御製」でした。)
 右端の、「御製謹解」のタイトルの下には「名古屋陸軍造兵廠」と書かれています。(名古屋陸軍造兵廠は、兵器などを作る工場です。)

「御製謹解」

「御製謹解」

 最初の「国を思ふ道にふたつはなかりけり戦の場にたつもたゝぬも」の、解説(意解)の部分を拡大してみました。
 解説の最後のところにご注目下さい。
 「……との御意と拝察し奉る。」となっています。かなり、へりくだった言い方です。「奉る」は「たてまつる」と読みます。
 また、「……との」のあとで改行して、「御意」が一番上に来るようにしているところにもご注目ください。
 ほかの4首の解説でも最後の言葉は同じ、「……との(改行)御意と拝察し奉る。」です。

軍人勅諭謹解
軍人勅諭謹解

軍人勅諭謹解

 つぎに、「軍人勅諭謹解」です。箱入りのハードカバーの本です。紺色の表紙の左上隅に「許可」「一八、三、二四」と書かれた紙が貼られています。
 最初の注意書きをご覧いただきます。
 「聖旨の深遠なる能(よ)く其(そ)の御真意を尽くし得ず却(かえ)って叡慮を誤ることなきかを懼(おそれ)ると雖(いえど)も現下軍隊の実情に鑑(かんが)み精神教育の資料として茲(ここ)に配布す」
(かたかなをひらがなに、旧漢字を新しい漢字に書き換えています。かっこ内に読みを入れています。)
 こちらも、天皇の言葉(勅諭)の意味や考え(聖旨・御真意・叡慮)を間違いなく解釈できているかどうか、心配(懼る)しています。

宣戦の大詔謹解
宣戦の大詔謹解

宣戦の大詔謹解

 「宣戦の大詔謹解」もあります。1941年(昭和16年)の宣戦布告の際に出された詔勅の解説です。本文・語句の解説のあと、わかりやすい言葉で書き直した「通解」・背景や意味をさらに説明している「述義」と続きます。


朝日新聞

朝日新聞 1943年12月6日夕刊

 「謹解」ではないのですが、「謹」という文字が使われているということで、こちらもご覧いただきたいと思います。1943年12月6日の朝日新聞の夕刊です。「天皇陛下 伊勢の神宮に御参拝」「藤田嗣治画伯謹作」
 「藤田嗣治氏謹話」として作者のコメントも載っています。
「御親拝を謹写の光栄に浴し」「自分の微才を顧みてただただ恐懼」「斎戒沐浴のなかに一心不乱全神経を傾け尽くして謹写し奉った次第です」
 さらに、天皇の姿(今上陛下の御尊影)を描き写す(謹写し奉る)だけでなく(かてて加えて)、
「伊勢の神宮の神域をも謹写するということは臣下としてこれ以上の感激はなく、」「日本に生を享けた画家の喜びに感泣しつつ完成を急いだのでした」ということで、ここでは天皇だけでなく、伊勢神宮に対しても、「謹写」という言葉を使っています。




詳しい画像はこちらからどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/20160822_kinkai.pdf
ピースあいちウェブサイトの、所蔵品の紹介のページからも、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/05_objects.html




 今回の記事を作成するときに、ピースあいちで学芸員資格のための実習をおこなっている4人の学生さんたちに、協力していただきました。
 資料の探索・写真撮影などの手伝いをしていただきました。ありがとうございました。