◆ボランティア雑感◆見えないもの    
ボランティア 大久保勝子



  2014年の10月24日夜、最接近した国際宇宙ステーションが、日本の上空を西から南東に通過していくのを見ることができた。一等星よりもずっと明るく光り輝いて、四百キロも上空にあるものが、肉眼ではっきりと見えた。
 点滅しない白くしっかりとした光の点が一定の速度で、ぐんぐん空を横切って行った。宇宙の彼方に浮かんでいる国際宇宙ステーションが確かに実在し、その中に宇宙人ではない人間の宇宙飛行士が数人搭乗し、作業をしている。そこから、紺碧の海に囲まれ、美しい緑の樹々が溢れた宝石のような国「日本」が見えたのではないか。どんなに遠くの点でも、実在を確認した感動を覚えて、興奮していたのである。

絵はがき

文部省著
『あたらしい憲法のはなし』より

  
 もう一つ、忘れられない場面がある。2013年10月3日、二十年に一度の伊勢神宮の遷宮の映像。夜八時、明かりが一斉に消され、静寂の暗闇の中、絹の幕に囲まれたご神体を新正殿へ移す遷御が営まれた。絹の幕の内には「明かり」が燈され、見えないものが、この世に有るように、厳かに、玉砂利を踏みしめる音と共に漆黒の森の中で営まれた。
 千三百年以上続くこの明かりの中におわします「神」は、「日本人の心」なのではないか、新年を迎えると、私たち大勢の人々が伊勢神宮へ初詣でに行き「この明かり」に祈っているのだと思ったのである。聴くところによると、神様には、自分の幸せだけをお願いしてはいけない。この国が「平和」でありますように、人々が皆、幸せでありますように…と祈るのが本来の神への祈りであるという。


 日本の「平和」は、戦後70年余り、憲法により戦争はしない国として守られ、ここまで来たのである。この日常の「平和」も、当たり前すぎて、目に見えていない、見えないものである。
 大切なものは、眼には見えないのである。 私は、目に見えないもの、この「平和」を守ることが大切な事だと思う今日このころである。